第5話 お説教

 家に帰って早々に、両親にこっ酷く怒られた。

 原因は、魔法を外で使ってしまったから。

 夏帆わたしの両親……母、大和 冬華やまと とうかと父、大和 絆やまと きずなはそれぞれ元国家陰陽師でそれはもう凄かったらしい。

 今では普通に主婦と会社員だけど。

 夏帆わたしそんな2人の娘である。

 夏帆わたしが魔法を外で使うと2人にその知らせがいく呪術を夏帆わたしに掛けていた。

 その事をすっかり忘れていて、夏帆わたしは今に至る。


夏帆なほ! あれだけ外では魔法は使うなと何度も言ったのに、何で使ったの!」


「……」


「良い? 何で夏帆あなたに魔法を使って欲しくないのか、解るわよね? 小さい時からずーっと言って来たのに、もう1回使っちゃいけないって身体で覚えさせようかしら?」


「それだけはやめて! お願い! 絶対に嫌!」


 何故、夏帆わたしがそれを嫌がるのかと言うと……魔力を少しでも使おうとすると身体中に激痛が走って身動きすら出来なくなる、と言う世にも恐ろしい呪術だから。

 それを夏帆わたしおとうさんが創り上げた。

 もう二度とは、ごめんだ。

 恐怖すら覚える程の激痛で、一度だけ気を失った事もあった。

 正直な所、親としてどうなのか? と思った事もあったけど……今思えば夏帆わたしを守る為なんだと今は分かっている。

 それでも、やっぱり感情的になって使ってしまうことがある。


「なら、冬華わたしとうさんの言うことを聞きなさい!」


「はい……」


 それでもまだ言い足りなさそうな冬華おかあさん


 ☆☆☆


 そんなこんなで話をしていると、突然インターホンが鳴った。

 冬華おかあさんが出ると、そこに居たのは夏騎なつだった。


「あら、夏騎なっちゃんじゃないの!」


冬華おばさん、突然来てごめんなさい家に上がっても良い?」


「勿論良いに決まってるわ!」


 夏帆わたしの両親は、2人揃って夏騎なつに甘い。

 まるで、自分の息子当然の様な扱いだ。

 夏帆わたしとしては、面白くもないし気分悪いけど……。


『大体決まって夏帆わたしが怒られてる時に来るんだよな〜』


 そう言う面では、これ以上怒られずに済むので凄く助かってる。


『本当、感謝感謝』


 夏騎なつがリビングに入ってきて、当然の様に夏帆わたしの隣に座ってくる。


冬華おばさん、これ以上は夏帆なほを怒らないでやって下さい」


「あら、どうして?」


『あ、いつものパターンだ』


夏騎おれ夏帆なほを怒らせてなければ、なんの問題もなかったし、それにその事は夏騎おれが2人の代わりに怒ってるので、許してやって下さい!」


 そう、小さい時もそうで夏騎なつがいつも助けてくれた。

 夏騎しぶんがいくら辛いことがあっても、夏帆わたしを一番に守ってくれた。

 それだけが夏帆わたしにとって、どれだけ救いになったことか。


「分かったわ、夏騎なっちゃんに免じて許すわ!」


『本当に、夏帆うちの両親は夏騎なつに弱いんだから』


 そんなことを思いながら、いつの間にか夏帆わたしへのお説教は終わったものだと思っていたのだけど……。

 その考えは甘かった。

 今度は、夏騎なつからのお説教が始まった。


「さて夏帆なほ、今日の事だが……」


「えっ?! お説教終わったんじゃなかったの!?」


「当たり前だ! 夏騎おれは飽くまで叔父さん、いや主に叔母さんからの説教を止めただけで、俺からの説教が終わったとは一言も言ってないぞ?」


「この薄情者!」


「なっ! 俺のお陰で主に叔母さんの説教を止めてやったのに、その言い草はなんだよ!」


「あら〜もう夫婦喧嘩かしら? ね〜あなた


「あ〜そうだな」


 この後に及んで夫婦喧嘩と言ってくる両親は放置して、夏帆わたし夏騎なつとの喧嘩を続行した。

 夏騎なつに対してのこれまでの事、主に生活態度だとか色々と言った。

 勿論、それに対して夏騎なつ夏帆わたしに対して、「お節介だ!」とか「夏帆おまえは俺の母親か!」などなど。

 いつの間にか、両親は暖かな目で夏帆・夏騎わたしたちを見ていた。


「なに2人して、暖かな目で見てるのよ!」


「いや〜だって、ね〜」


「そうだな」


「おい! 聞いてんのか!」



 夏帆わたしは顔を真っ赤にしながら『もう……いやだー!!』と叫んだ。

 程なくして、夏帆わたしのお説教は終わりましたとさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る