第4話 入学式③

『何でいつもこうなるんだろう……』


 それは、中学での時もそうだった……。

 夏帆わたしが中学時代、成績トップを出すと夏帆わたしだけでなく夏騎なつまで言ってくるからだった。

 夏騎なつは、「気にしてねーよ」って言ってくれるけど……夏帆わたしとしては、「気にするな」と言われて、「はい、そうですか」っていう様に出来なかったから。


「なぁ大和 夏騎やまと なつきってあの、魔術陰陽師の大和 夏やまと なつの生まれ変わりなんだろ? だから、大和 夏帆やまと なほはお前の事を夏騎なつって呼ぶんだろ!」


 夏帆わたし自身そのつもりで、夏騎なつの事を呼んでないし、それに私にだってって入ってるし……夏帆わたしが呼ばれてもおかしくはなかった。

 それなのに、みんなそうやって夏騎なつを気づつけた。


 ☆☆☆


 そんなある時、それが嫌で夏騎なつの事を夏騎なつきって呼んだから物凄く怒ってきた事があった。


夏帆おまえ、今何て呼んだ俺の事!」


「えっ? 夏騎なつきって呼んだよ?」


夏帆おまえ、次その名で呼んだらただじゃ済まさねーぞ」


 それが初めて、本気で夏帆わたしに怒った夏騎なつの顔だった。


 ☆☆☆


夏帆わたしが委員長やる! 静乃しずの先生良いですよね!」


 沈黙の中、突然大声で夏帆わたしが立候補したのもあって視線は私に向けられた。

 当然ながら、夏騎なつもびっくりしてたけど。


「は、はい! じゃあ後は副委員長かな?」


「じゃあ、俺がやるよ」


 そう言って立ち上がったのは、秋斗あきとだった。

 手を上げて立ち上がろうとした夏騎なつはどうやら出遅れたみたいだ。

 何せ、後ろを向いて秋斗あきとの事を睨んでいたくらいだから。


『何で夏騎なつってば、秋斗あきとのことを睨んでるんだろう?』


 テンポよく、委員長と副委員長が決まったおかげで今日は他のクラスよりも早くに終わる事ができた。


「じゃあ、委員長と副委員長が決まったので今日は終わりです! みんな気をつけて帰ってね〜」


 そう言い残して、静乃しずの先生は何処かに行ってしまった。

 それから、夏帆わたしは帰る準備をしていると、そこに2人の女の子がやって来た。


「ねぇ〜大和さんはどっちがタイプなの?」


「私は断然、鈴くんだな〜」


「え〜大和くんもかっこ良くない?」


「「で、どっち!」」


『そんな事を聞かれても困るんだけどな』って思いながら、夏帆わたしは――。


「ひ・み・つ!」


「「えー! けちー!」」


「ところで、2人の名前は〜……」


「あ、ごめんなさい! 私の名前は大神楽 結美おおかぐら ゆみね、よろしく」


「私が河岸 玲美かわぎし れみよろしく」


『この2人は恐らくちょっとした知り合いなんだろうな』って思っていたらやっぱりそうだった。

 どうやら、この2人は秋斗あきとは兎も角として、夏騎なつの事をかっこいいと思ってるみたい。


「えっと、私は……」


「「大丈夫知ってるよ! 有名人だもん!」」


『何かやたらとこの2人言うことがハモってない?』


「大和さんじゃなくて、夏帆なほで良いよ!」


「じゃあ、私も結美ゆみで良いからね」


「私も玲美れみで良いから」


 こうして、学園に入学して初めての友達ができた。


「「それじゃあ、また明日ね」」


「うん! また明日!」


『それにしても、完璧に言うことがハモってるから、まるで双子みたいだな』


 そう夏帆わたしは思いながら、夏騎なつ秋斗あきとと一緒に帰った。

 秋斗あきとは正確に言ったら、帰る方向が同じみたいで付いてきただけみたい。


『帰ったら、夏騎なつに謝らないとな〜』


 そんな事を考えながら、夏帆わたし達はそれぞれの家に帰った。

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