第3話 入学式②

「それでは、先ずは講堂まで移動してね〜」


 静乃しずの先生に促され、夏帆わたし達は講堂に向かって移動し始めた。

 けど、途中で夏帆わたし静乃しずの先生に呼び止められた。


大和 夏帆やまと なほさん、貴女は新入生代表だから挨拶よろしくね」


「あ、はい!」


「緊張しなくても大丈夫だからね」


 静乃しずの先生はそう言って先に講堂に行ってしまった。

 ちなみに、夏騎なつはと言うと……夏帆わたしの隣に立って眠そうにしていた。


「そう言えば夏帆おまえ、髪をいつの間に直したんだよ」


「えっ! 今更だね、教室に着く前にだよ」


『なんだ夏帆わたしの髪の心配か、挨拶の方が緊張してるのに!』


 そう夏帆わたしは思いながら夏騎なつと一緒に講堂に向かって歩いていた。


 ☆☆☆


 講堂では、2年と3年の先輩達や先生方が新入生である夏帆わたし達を待っていた。

 夏帆わたし達新入生が入場し、席に着くと先ずは校長先生の話がありその後、生徒会長の挨拶があって新入生代表の挨拶……つまり夏帆わたしの挨拶。

 それも無事に終わり、生徒会からのレクがあってそれを暫く見てから漸く入学式が終わった。


 ☆☆☆


「あ〜、やっと終わった〜」


 教室に戻ってから夏帆わたしは大きく伸びをした。

 新入生代表の挨拶と言う重みから解放され、最高の気分でいた。


夏帆なほ、ちょっと良いか?」


『げっ! 夏騎なつ……絶対朝の事だよね』


「な、なにかな? 夏騎なつきさん?」


夏帆おまえ、今朝は何をした?」


「えっ……そ、それは〜」


 夏騎なつは、不機嫌そうに夏帆わたしを追い詰めてきた。

 流石に教室ここでは、大きな声では魔法の事は言えないので夏騎なつの耳元で言った。

 そしたら、夏騎なつは溜息をついた。


「ハァ〜」


「何で溜息つくのよ!」


「ハァ〜」


『確かに夏帆わたしが魔法を学園の……しかも正門の前で使ったから悪いけど』


 そんなやり取りを夏帆わたし夏騎なつがしていると、1人の生徒が夏帆わたし達に声を掛けてきた。

 何処かで見たような気もしていたけど、夏帆わたしは覚えていなかった。

 その代わりに、夏騎なつが覚えていたみたいで。


「よ! 久々だな夏帆なほ夏騎なつき


「おっ! 誰かと思えば、秋斗あきとじゃねーか!」


『ん? 秋斗あきと? って小さい時に良く夏騎なつと遊んでた男の子!?』


「いや〜久々だな〜本当に」


「何年ぶりだ?」


秋斗おれが引っ越して丸5年だから、小学生以来じゃね〜か?」


 そう言えば小学生の頃、3人で良く遊んでたっけ? と思いながら夏帆わたしは2人の話を傍で聞いていた。


「はーい、みんな席に着いてー!」


 静乃しずの先生が教室に漸く戻ってきた。

 恐らく10分休憩とかそんな感じなんだろうと夏帆わたしは思っていた。


「さて、今日は授業という授業がないので自己紹介をして、後は委員会とか決めて今日はお開きにします」


『やった! 今日は早く帰れる!』


「それじゃぁ、先ずは赤西いかにしさんから名前順にお願いね♪」


 そう静乃しずの先生が言って名前順にどんどん自己紹介が進んで行った。

 そうして、漸く夏騎なつの番になり夏帆なほの番になった。


「えー、大和 夏騎やまと なつき、よろしく」


『えっ! みじか! 夏騎なつってば短過ぎ!』


「えっと、大和 夏帆やまと なほです、私の前に座ってる大和 夏騎やまと なつきの親戚です、兄妹じゃないのでよろしくお願いします!」


 夏帆わたしがそんな自己紹介をすると、夏騎なつが後ろを向いて「余計な事を言うな」と言わんばかりの顔をしてきたので、夏帆わたしは無視した。


「俺で最後だな、鈴 秋斗りん あきとよろしく」


 秋斗あきとの自己紹介も終わって、何事もなく全員の自己紹介が終わって次は委員会決めとなった。

 ちなみに秋斗あきとは、身長は夏騎なつより少しだけ高く(185センチ)、黒髪でヘアバンドをしていて、瞳の色は黒。


「えっと、委員会と言ってもクラス委員長と副委員長の2人だけだから、そんなに時間はかからないと思うわよ」


 そしたら、クラスの1人が余計な事を言い出した。


「そーいえば、俺らのクラスに首席様がいるじゃねーか、そいつにやらせれば良くね? それかさ……伝説の魔術陰陽師の生まれ変わりの大和 夏騎やまと なつき君にやって貰うのはどうだう?」


 大概そう言う奴が出てくるのは、正直な話分かってはいたけど、やっぱり少し辛いものがある。

 それは、夏帆わたしがそうやって言われる度に夏騎なつがそう言われてしまう。

 それが、夏帆わたしにとって最も辛い事だった。


『何でいつもこうなるんだろう……』

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