第2話 入学式①

「ヤバいよ〜遅刻する〜!」


「最悪、俺が夏帆おまえを抱き抱えてダッシュするから平気だよ」


『な、な、なんでそんな恥ずかしい事をサラッと言えるわけよ〜!』


 夏帆わたしは、顔を真っ赤にしながら走った。


『あーもー! 恥ずかしい!』


「おーい、何タラタラ走ってるんだよ〜」


 いつの間にか、夏帆わたし夏騎なつよりも後ろで走っていた。


「あれ? いつの間に? ってそれより遅刻する〜」


「ったくしょーがねーな〜」


 夏騎なつは、夏帆わたしを抱き抱え呪符を取り出し、両脚に強化の呪術を唱えた。

 そして、夏騎なつは高々に飛び上がった。


「きゃー!!」


「うるせー! 黙ってろ!」


 夏帆わたしは、スカートの裾を押さえた。

 そうでもしなければ、スカートが捲れ上がってパンツが見えてしまう。


「今、何時だ?」


「えっ? 今は〜8時25分だよ」


「ギリギリ間に合う……かな?」


 夏帆わたしは少しだけ嫌な予感がした……その予感は的中して。


夏帆なほ、霊脈に乗るからしっかり捕まってろよ」


「えっ!? ちょ、ちょっ――」


 夏帆わたしが制止を促すよりも先に夏騎なつは霊脈に乗った。

 チャイムの鳴る残り3分前に学園に到着した。


「ほい、到着」


「ねぇ、夏騎なつ〜! 髪がボサボサになったじゃないの!」


「良いじゃね〜か、遅刻だけは免れたんだから」


「だいたい! 夏騎なつがもっと早く起きてたら、こう言う事にならなくて済んだのに! バカ!」


 夏帆わたしは半泣きで顔を真っ赤にしながら、夏騎なつに文句を言った。

 そんなやり取りを正門の前でしていると……、チャイムが鳴り響いた。


「あ、チャイム鳴ったな」


夏騎なつのバカー!」


「待て待て、夏帆おまえ学園の正門前こんなところでグダグダ文句を言ってるからだろうが! てか、んな事をしてる間にも……」


 夏帆わたしは半泣きになりながら、魔法陣を展開し予めクラスの教室は分かっていたので教室に瞬間移動する準備を始めた。


「光の守護獣よ、我を光の速さで教室まで移動させよ! テレポーション!」


 夏帆わたしが詠唱し終えた瞬間、夏帆わたし夏騎なつを置いて行った。

 その1分後……夏騎なつが慌てて教室に入って来た。


夏帆なほ、あとで話があっから」


『あ、ヤバっ! 滅茶滅茶怒ってる……しかも、魔法使っちゃったからかも』


 誰がどう見ても夏騎なつが怒ってるのが丸分かりの態度とオーラだったから。

 ちなみに、夏帆わたしが突然教室に現れた時のクラスメイトの反応は……おてんば娘が来たとかそう言うのではなく、『入学早々に遅刻とは流石は首席殿』って言わんばかりの顔をされた。

 その後に、夏騎なつが入って来たのでそっちに視線が逸れた。


 ☆☆☆


「はーい! 席に着いて〜」


 担任の先生が教室に入って来た。

 どうやら、夏帆わたし達のクラスの先生は女の先生みたい。

 背丈は、夏帆わたしより10センチくらい(夏帆身長→158センチ)大きく、髪の色はブラウンカラーで瞳の色は少しばかり赤っぽい……属に言う美人。


「それじゃー、先生の自己紹介するね」


『綺麗な先生だな〜それに胸が……』


 自分の慎ましい胸を見て溜息……。

 それから、夏帆わたし夏騎なつの方を見ると……。


夏騎なつのやつ寝てるし』


「これから3年間担任を努めます、朝野 静乃あさの しずのです! よろしくね♪」


 こうして、夏帆わたし達の学園生活が始まった。

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