終わり行く先に

南月 結

第1話 はじまり

 1人の青年がいた。

 そいつは世界でたった一人の魔法や魔術、呪術の総てを司るハイブリッドと呼ばれる存在だった。

 彼の名を、大和 夏やまと なつと言う。

 かれは、とある儀式の為に魔術・呪術の二つ同時展開をし、大最悪をもたらした。

 本来、魔術と呪術では扱う力が違うため決して交わる事も増してや同時展開など出来るはずもなかった。

 そして、最後にかれは「また、この世に転生する」と言い残して姿を消した。


 ☆☆☆


 現代の日本に置いて、かれの儀式失敗における影響は大きく、魔獣などと言った魔術的災害や霊獣と言った霊的災害が後を絶たない。

 そもそも、どうして大和 夏やまと なつはそんな大最悪を起こすまでの儀式を行ったのか、1つは科学の壊滅が目的で実際には成功している。

 この世は、既に魔術言わゆる魔法と元々存在していた呪術がこの世界を構築している。

 つまり、かれが失敗したのは更に上位の儀式になるのだが……それを知るものは今の現代において、その一族か家臣の一族のみであろう。

 そして、かれの本当の正体を知るものは一族だけとされている。


 ☆☆☆


 大和 夏やまと なつは傍に護法式……つまり式神がいた、それも二体。

 1体は、陰陽の世界において魔法使いと言うのはかなり珍しい。

 容姿端麗でとても美人。

 戦闘となると膨大な魔力を用いて闘う。

 もう1体が……鬼だ。

 青年の姿をしていて、1つの特徴がある。

 それは、片目がなく黒い眼帯をしている。

 そして、最後にかれが身に付けていたとされる呪具は……今では禁呪具となっていて、今の所在は不明となっている。

 その呪具は、八咫烏の姿をしていて時に黒コートの様に変化したり、単体での呪術の図書館と言われても良いくらいの記憶能力がある。

 今では禁呪指定されているが、禁呪までも記憶されていて着用者はその呪術総てを扱う事が出来ると言われている。

 ちなみにかれは当時、魔獣は傍にはおいて居なかったという。

 ただし、当時一部の人達の噂ではかなり危険な魔獣を傍においていたらしいとなっていた。

 そして、月日が流れ……現代――。


 ☆☆☆


夏帆なほ〜!今日から陰陽学園の入学でしょ〜!」


「はぁーい!」


 彼女の名前は大和 夏帆やまと なほ、今年の春で陰陽学園に通うことになる1年生だ。

 夏帆かのじょは学園の入試と実技でトップの成績を残して首席合格している。


『さて、あのバカを起こしに行きがてらさっさと学園に行こっと!』


「お母さ〜ん! 行ってきま〜す!」


 夏帆わたしは、そう言ってダッシュで家を出た。

 家を出て直ぐに隣の家に入った。


『あのバカ、絶対まだ寝てる!』


「叔母さ〜ん! おはよ〜」


「あら、夏帆ちゃんおはよう、あの子なら多分まだ寝てるんじゃないかしら」


 夏帆わたしは、階段を勢い良く上がり部屋を開けた。


夏騎なつ! 早く起きろー! お・き・ろー!!」


「ん、あぁ〜うっせーな!」


 彼は大和 夏騎やまと なつき夏帆わたしと同い歳で幼馴染み。

 身長は180センチで、髪は黒髪で短髪、瞳の色は茶色っぽい色をしている。

 ちなみに夏帆わたしの所が本家で、夏騎なつの所が分家にあたる。


「今日は入学式だよ! いつまで春休み気分でいる気よ!」


「あ〜、分かったよ! 起きて準備するよ」


「じゃあ、夏帆わたしはリビングで待ってるから早くしてね!」


 夏帆わたしは、部屋を出てリビングに降りた。

 リビングでは、叔母さん(夏騎なつの母)が優雅にモーニングコーヒーを飲んでいた。


「寝てたでしょ?夏騎あのこ


「うん、寝てたから叩き起したって言うか大声で叫んで起こしたよ♪」


「下まで聴こえて来たからね〜」


 そう言われ、夏帆わたしは少し恥ずかしくなった。

 いつもの事だけど、やっぱり面と言われるとって感じ。

 時刻は8時、学園までは大体歩いて15分程かかる位置にある。

 その為、夏帆わたし的には少し焦っている。

 何せ入学式早々に遅刻とは笑えない。


「それにしても、夏帆ちゃんの黒髪は相変わらず綺麗ね〜」


「何せ毎日手入れしてるからね〜!」


 夏帆わたしの髪は黒髪で長さは肩に付くか付かないかの長さで、身長は158センチと女の子の中では小柄な方で、瞳の色は青い瞳をしている。


「それに、その青い瞳なんか宝石みたいに綺麗ね」


「叔母さん、それもう小さい時から言ってるじゃない」


「まぁね〜だって本当に綺麗なんだもん」


 そして、時刻は8時10分……漸く夏騎バカが降りてきた。

 面倒な顔をしながら、頭をかいて欠伸をしていた。


夏騎なつってば遅い〜! 遅刻するー!」


「はいはい」


 時刻は8時15分……走らないと間違いなく遅刻コース。


「叔母さん、行ってきまーす!」


「2人共、気をつけて行きなさいよ〜」


「は(へ)ーい!」


 夏帆わたしは、急いでローハーを履いて駆け足で玄関を出たけど、相変わらず夏騎なつはタラタラと靴を履いて玄関出た。


夏騎なつ! ダッシュ! 遅刻するから!」


「へーへ」


 入学式早々、夏帆わたし達は走ることとなった。

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