第3話 プロローグその3 かばんちゃんとサーバルの過去
巨大な黒セルリアンとの激闘を終え、新しい旅に出たかばんちゃん·サーバル·ラッキーさん。 フェネックとアライさんを加えた5人旅···時には喧嘩してすっちゃかめっちゃかになっても、仲直りした後は前より仲良しになるというまさに順調な旅路だった。
『きょうしゅうエリア』から『ごこくエリア』、『さんかいエリア』から『あんいんエリア』と旅を終え、久しぶりに『きょうしゅうエリア』に帰るために『あんいんエリア』の端···日本列島で例えるなら山口県辺りの場所から、行きの時の様に手作りではない···ヒトの遺した船にじゃぱりバスを載せて『きょうしゅうエリア』に渡った···そんな矢先の事であった。
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「いや~、久しぶりのきょうしゅうエリアだねぇ」
「早くパークのみんなにアライさんの大活躍を話したいのだ!!」
「でも結構わたしみたいにどじー!な時もあったよねアライグマ!」
「そう言えばそーだったね~」
「んなっ!?サーバル、フェネックひどいのだ!?」
「もうみんな···ふふふっ」
「カバン、ハカセタチノチカクノラッキービーストニレンラクヲイレタヨ」
「あっはい! ありがとうございますラッキーさん!」
語らいを楽しみながら無事船を港に付けた一行。さて久しぶりに皆に会いに行こう···そう思った矢先!! 突如近くの海の水が大轟音と共に天高く吹き上がった!!
「「「「うわぁーっ!?」」」」
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「な、何なのだ今のは!?またパークの危機なのか!?」
「···っ、どうやら海で何かあったみたいだね~」
「うぅ~···耳が痛いよ~···」
「うっ···ラッキーさん、今の凄い音は何か分かりますか?」
「······ウミデカザンガフンカシタカノウセイガアルネ。ミズベカラハナレタホウガイイヨ」
「分かりました! 皆さん、海辺から離れましょう!」
「分かったよかばんちゃん···まだ耳が痛いよ~」
ラッキーの警告に従い港を離れた一行。しかし港から外に出たまさにその時、突如ラッキービーストが「キケン!キケン!セルリアンセッキンチュウ!!」とかばんちゃんに警告指示を出した!!
「えっ!?セルリアン!?嘘っ!?」
「···私もサーバルもまだ耳が治ってなかったから、物音に気付けなかったよー···!?」
「大丈夫なのだ!!アライさんがセルリアンをやっつけ······な、何なのだコイツらはー!?」
「···見たことのないセルリアン···!?でも、あの時の黒い大きなセルリアンと似た色···? ラッキーさん、やっぱりこれもセルリアンなんですか!?」
「···ケンサクチュウ、ケンサクチュウ···。···ゴコク·サンカイ·アンイン·カクエリアデノアップデートデータニモガイトウナシ。キケン!キケン!タダチニタイヒシテクダサイ!!」
「そんな事言ったって、もう囲まれちゃってるよー···!!」 「···これはまずいかもね~」
サーバル達が周りを見渡すと、かなりの数のビースト型セルリアンに取り囲まれていた。 ジリジリと距離を詰めて来た···と思ったその時、奴らは一斉に襲いかかって来た!!
「此処は一旦逃げるよ~···!! サーバル!アライさ~ん!一番数が手薄なあそこを目指して~!」
「分かったのだ!」「任せて!行くよ、かばんちゃん!!」「う、うん!」
フェネックが囲みの一番薄い箇所を見つけて指示、サーバル達はそこを目指し脱出を試みた。 統制が取れていない分囲みを抜けるのは容易く、このまま逃げられるか···と思ったその時!!かばんちゃんの背中に体当たりをかまして来たビースト型セルリアンが!!
腕を引いていたサーバルは突飛ばされ、体当たりを食らい倒れたかばんちゃんが見たものは今まさに『自分を爪で切り裂かんとするビースト型セルリアン』の姿だった!!
「···ぅわっ!?た、食べn」「···ッ!? ダメぇーーっ!!」
ザシュッ···!? 「···ァッ···!?ヴぁ···っ······」
「······えっ···?」
次にかばんちゃんの目に映ったものは、自分を庇いセルリアンに額を切り裂かれ、顔から血を流し倒れ伏していくサーバルという···世界で『一番見たくない光景』であった。
「さ、サーバルちゃ······嫌ぁぁああぁぁーーッ!?」
「「サーバル!? このォーッ!!」」 バキィッ!! パッかぁーん!!
サーバルがやられた事に気が付いたフェネックとアライさんが、怒りのコンビアタックで下手人のビースト型セルリアンを粉砕したものの···。 サーバルは頭から血を流し意識不明·かばんちゃんは「サーバルちゃん!サーバルちゃん!お願い死なないで!お願いだから···!!」と、サーバルにすがりつきながら半狂乱気味で泣き叫んでいる。
「これは、流石にもうダメかな~···悔しいけどさ~」
「諦めるのかフェネック!?······フェネック、あの二人を連れて逃げるのだ。アライさんは囮になるのだ!」
「ッ!!ダメだよアライさん!!そんな事したら死んじゃうよ!!私はアライさんと別れるのは嫌だ!!」
「でもこのままだとみんなやられてしまうのだ!!だからお願いなのだフェネッ······誰か来るのだ!?」
絶望的な状況の中、アライさんが皆を逃がす決意を固めたその時······彼方から猛スピードで此方に向かって来る謎のフレンズ?が現れた!!
彼女は高くジャンプしたかと思えばその勢いのままビースト型セルリアンを強襲、「ゥガアァァァァッ!!!!」と一声吠えるや否やアライさん達が息つく暇もなくあっという間にビースト型セルリアンを片付けてしまった···!!
「す、凄いのだ!あれだけいたセルリアンを···」
「···でも良~く見たらあのセルリアンと似てるね~···。味方、じゃないかもね~」
「···。ッ!」
···一瞬のにらみ合いの後、謎のフレンズ?は再び凄い勢いで駆け去ってしまった。 気が抜けて一瞬へたり込みそうになる二人だったが、かばんちゃんの悲痛な叫び声を聞いて我を取り戻し、サーバルの容態を確認しに走り寄った。
「···結構血が出てる、早くサンドスターを補給させて治療しないとまずいね~···!!」
「ど、どうするのだフェネック··!?」
「サーバルちゃん、サーバルちゃん、目を開けてよぉ···っ」
「···ッ!!」 グイっ!バシンっ!! 「フェネック!?」
「···ッ!?···ぁ、フェネック、さん?」
「叩いてごめんねかばんさん。でもね、泣いててもサーバルは助けられないんだよ~?かばんさんがしっかりしなきゃ~···ね?」
「···っ。は、はい!!」
フェネックの一喝で意思を取り戻したかばんちゃん。 取り敢えず応急処置を施した後、ラッキービーストに「近くに何か施設はないか?」と聞いたところ、近くに放置された『らぼ』がある事が判明したので、急いでじゃぱりバスで向かう事になった···
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『らぼ』に着いたかばんちゃん達はひとまずサーバルをベッドに寝かせ、薬やじゃぱり製品を探した。 幸いな事にじゃぱりジュースがあったので、かばんちゃんがプレーリードッグの『あいさつ』を参考に口移しで飲ませてみたら、少しずつ少しずつではあるが飲んでくれた。
暫く経ってから連絡を受けて駆け付けた博士と助手にもサーバルの容態を確認してもらったが、怪我自体は少しずつ回復しているという事だった。しかし······
「博士さん、助手さん、サーバルちゃんは目を覚ましてくれるんでしょうか···?サーバルちゃんが目を覚まさなかったら、ぼく、ぼく···!!」
「辛いと思いますが落ち着くのですよかばん。あなたが泣いてもサーバルは目を覚まさないのですよ」
「そうですよかばん。幸い傷は少しずつ治っているのです、私達もついているから落ち着くのですよ···」
「助手さん、博士さん···」
サーバルが怪我をしたあの日以降、博士たちとフェネックたち四人が献身的にかばんちゃんに寄り添ってあげた事により、かばんちゃんは少しずつ落ち着きを取り戻していった。
後はサーバルが目を覚ませば万事解決、そう、その筈だった······
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「おはよう、サーバルちゃ···サーバルちゃん? ······サーバルちゃん!?サーバルちゃん!?何処に行ったの!?」
「どうしたのですかかば···!?サーバルが居ない!?」
「サーバル···!?一体何処に···?」
ある日かばんちゃんがじゃぱりジュースを持って部屋を訪れたところ、其処には開いた窓と空のベッドだけが残されていた。再び錯乱しかけたかばんちゃんを宥め寝かし付けた四人は周辺を捜索するも、サーバルの行方は判らず仕舞いだった······
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「博士~、やっぱり私達一度もっと遠く迄サーバルを探しに行ってみるよ~」
「アライさんもフェネックについて行くのだ。博士達はかばんさんをお願いしたいのだ···。アライさんはかばんさんを落ち着かせるのがあまり上手くないから···」
「···分かりました、お願いできますか?」
「かばんの事は任せておくのです。二人とも、気をつけるのですよ。あの新しいセルリアンがまた現れる可能性もありますし」
相談の結果アライさんとフェネックはサーバル捜索の旅に出る事になり、博士と助手はかばんちゃんの面倒を『らぼ』で見る事になった。
この後フェネックたちがサーバルを発見するものの、サーバルは今までの記憶を失っている事が判明、辛い現実を伝える事となる···。
フェネックたちがサーバルの捜索に出ている間に博士と助手は『らぼ』の資料を検索しており、もしかすると記憶を失った理由は『頭を怪我した時にセルリアンからセルリウムを混入させられた影響では?』という仮説を立てた。 こうしてかばんちゃんは悲しい心に無理やり蓋をして『かばんさん』となり、セルリウム研究を始めたのだった······
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後書きです。
本当はサーバルちゃんに怪我をさせたくなんかなかったのですが、世代交代以外ならこうでもしないと記憶喪失は難しそう···そしてかばんちゃん→かばんさんになるきっかけがないよなぁと思い、心を鬼にして書きました。
因みに位置関係としては、キュルルが居た場所はプロローグその1の研究所チーフが勤めていた研究施設·かばんちゃん達が駆け込んだのがゼロ班が使っていた研究施設という設定(セルリウムが記憶に影響があるかも?という仮説を立てられた理由)です。
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