第2話 プロローグその2 アムールトラの過去

「やはり調整はまだ上手くいかんのか」


「はい、人の命令に従いセルリアンを撃退するように施した思考誘導は上手く行っているはずなのですが···」


「······ぅゥぅっ···!!」



此処はパークの研究施設の『影の部分』であるとスタッフに噂されている部署、通称ゼロ班。 彼らはスポンサーの一部からの直接融資を元に、対セルリアン用生物兵器『ビースト』の研究を始めていた。



「この研究が上手く行けば、わざわざあのマイペースなフレンズ達に頼らずともセルリアンから人間を守れる···フッフッフ!!」


「その為にわざわざ危ない橋を渡って、元が強力な動物であるアムールトラを確保した訳ですからね···」


「此処に勝手に入って来たクソガキも、ちょうど良い隠れ蓑になってくれたからな···」


 

そう···現在キュルルを治療しているサンドスター治療装置は不備を抱えていたのではなく、サンプルを手に入れる為にゼロ班の一人が直接装置にセルリウムを混入···起こる筈のない事故を引き起こしたというのが真相だったのである。 そしてキュルルが生死の境を彷徨う羽目になったのも、間違って施設に迷い込んでアムールトラを目撃したキュルルをゼロ班スタッフが発見·薬で眠らせた後にセルリウムを摂取させ、「子供が誤ってセルリウムを摂取した」と治療施設に連れ込んだせいである。

アムールトラの(実は意図的だった)治療事故を受けて、装置開発の責任者である研究所チーフ(プロローグその1の女性チーフ)は装置を『治療開始前、治療中の定期的なスキャン機能·治療開始後は内部に異常がある時·もしくは災害などにより電源が確保出来ない等の緊急時以外はチーフが特別コードを入力しない限り開放不可能』な仕様に改良し、その後別のフレンズを見事に治療し安全性を立証したのであった。



「全くあの女め、忌々しい···!!無駄に装置を改良しおったせいで新しいサンプルの確保が困難になった!」


「とりあえず今はこのサンプルだけでどうにかするしかないですね···」


「······ぅう···ぁあっ···!!」



···その後様々な研究を試みたものの完全に制御には至らず、何故かスポンサーからの融資も途切れてしまった。 そして主要スタッフが逮捕された事もあり、残ったゼロ班のスタッフは便宜上『治療していたアムールトラが突如暴走した』という名目にし、サンドスター治療装置に精神安定機能を付与した『ゆりかご』という名の改良品(と謳っていたが、実際は精神安定ではなく洗脳。パーク運営やスポンサーには「今はアムールトラ専用。データが集まり次第提出する」と虚偽報告していた)に手枷を付けたまま封印、そのままゆりかご共々地下に隔離しビースト研究の証拠を闇に葬った。

そして数十年後にキュルルが目覚める少し前、まるで海底火山の噴火の影響により増えたセルリウムに導かれる様に、ビーストことアムールトラは『セルリアンを倒す』という、精神に植え付けられた命令に従い行動を開始した(但しゆりかごの経年劣化により命令は不完全に植え付けられており、その影響で自分を洗脳した『ヒト』に対しての憎しみが少し残っている。 但しかばんちゃんは『ヒトのフレンズ』になってしまってるので対象外)のである。


しかし彼女は知らない。自身の体内に治療し切れなかったセルリウムが残留·増殖しているせいで暴走している事。 命令を遂行すればする程その増殖した残留セルリウムが排出、サンドスターと反応·結合する事によって倒しても倒してもビースト型セルリアンが産まれ続けてしまう事を···。




____________________




後書きです。 とりあえずキュルルとアムールトラちゃんの二人の改変はこんな感じです。今後考えてる本編の改変としては···

1.フレンズ型セルリアンはある程度カット予定→絵から登場するのは一度きり。 その代わりビースト型のセルリアンが量産、フレンズを襲う→見付けたビーストが闘う→セルリアンを倒す事以外に気を回さない闘い方によりフレンズも怪我をする事が→ビーストが恐れられる理由にしようかな~と。

2.キュルルの絵からセルリアンが生まれる理由。 プロローグで治療装置により治療を受けていましたが、パーク閉鎖によるメンテナンス不足→完全に治療出来てない→記憶喪失と、目の色が違うのはその影響→ビースト同様セルリウムが微量に体内に残っている為、強い思いに反応(感謝の気持ちや楽しい時など)した時に彼の体内に眠るセルリウムが漏れ出し、絵の中に混入→何かのきっかけをトリガーに絵のセルリウムが活性化した時にセルリアン化···的な。 アムールトラの様に体内セルリウムが増殖しないのは、ヒトとフレンズによる差。

3.原作の様にキュルルが突然ビーストを助けたいと思うのではなく、過去に苦しむ彼女を見る→頭の何処かにその光景が残っているから···というフラグを立ててみました。イエイヌちゃん回でこのフラグは回収したいなぁ···。 因みにリョコウバトさんともちょっとしたフラグを考えています。


スポンサーがゼロ班への援助を打ち切った理由ですが、プロローグその1の登場人物であるチーフ二人が秘密裏に情報を入手→キュルルの親を含む別スポンサーにリーク→個人的に融資していたスポンサーは圧力がかかって手を引いた→キュルルにセルリウムを摂取させた研究者は逮捕···という裏設定だったりします。


追記 4月11日、前後のお話との矛盾点を加筆修正しました

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