第3.5話 ヒトを求める者たち
これはキュルルが目覚める前の時系列···ビーストことアムールトラが目覚め活動を始めた後の話である。
「···ではすみませんが、同じ依頼内容でもう一度お願いします」
「わっかりましたー!私達ダブルスフィアにお任せ下さい!」
······此処は探偵をしている『ダブルスフィア』ことオオアルマジロとセンザンコウの住む『じむしょ』。 今彼女達は以前に仕事の依頼をしてきたフレンズ···イエイヌから再度、しかし内容は同じ『ヒトの探索』という依頼をされている所だった。
「ひとまず依頼内容は理解致しましたが···しかし、ご期待には添えないかもしれません」
「えぇ~···センちゃんやる前から弱気だなぁ。前向きに行かないと!」
「貴女のそういう所は嫌いじゃないですが···。以前依頼目標として漸く見つけたヒト···かばんさんに会う迄の時間がどれだけかかったか忘れた訳ではないでしょう?」
「うっ···まあそれはそうなんだけどさぁ」
「そういえばイエイヌさん、依頼を受諾する前に一つ確認したいのですが···。前回の貴女のご依頼だった『ヒトの探索』、かばんさんでは依頼満了にならなかったのは何故でしょうか?」
···そう、実は以前一度同じ依頼を受けていたダブルスフィアはきょうしゅうエリアを巡り、『らぼ』に暮らすヒトであるかばんと出会いイエイヌに紹介していたのだ。
「···かばんさんも確かにヒトではあったのですが、お話をさせてもらった所あの方は「私は正確にはヒトのフレンズだと思う」とおっしゃっていました。 私は『ヒトのフレンズ』ではなく、かつて共に過ごした『ヒト』を探して欲しいのです···わがままを言って迷惑をかけているのは重々承知の上ですが、依頼を受けてはもらえませんか?」
「···分かりました。私には詳しい事情は解らないですが、探偵として出来る限りご期待に添える努力はさせて頂きます」
「···ありがとうセンザンコウさん。 では、二人共宜しくお願い致しますね」···そう言って一礼をした後、イエイヌは少し陰のある表情を浮かべながら再びヒトが遺した『おうち』へと帰って行った。
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「···で、依頼を受けた訳だけどさ~。当てはあるのセンちゃん?」
「とりあえず今回も足を使って聞き込みしつつ···今度はヒトが遺したモノも積極的に探索してみようと思います。頼りにしてますよアルマーさん?」
「任せといてよ!絶対ヒトを見つけようね!」
そして二人は再びきょうしゅうエリアを巡るのだが···。調査を始めて少し期間が経ってから立ち寄った『駅』の周辺に居たカルガモとロバから「最近その『ヒト』らしきフレンズを見かけた」という重要情報を得る事に成功、情報固めの為にヒトが遺した施設を探索してみる事にした···。
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「センちゃ~ん、なんか薄暗い所だね~···」
「カルガモさん達の情報をまとめると、恐らくその『ヒト』と思われる存在はあの『駅』とやらの近くから来たみたいですから···。ここにも何か手掛かりがあるかもしれません」
「相変わらず慎重派だねぇセンちゃんは···」
···などと話しつつ建物内を探索した二人だったが、結局分かったのは『この建物内部で最近自分達以外の誰かが動き回った事、良く解らないモノの蓋が最近開いた事(周りの埃などの状態からセンザンコウが推察)』だけだった。
「うーん無駄足だったかな~···」
「そうでもないですよアルマーさん。少なくともここで誰かが『目を覚ました』のはほぼ確実でしょうし···もしかすればその存在は本当にヒトかもしれませんよ」
「なるほどね~。で、これからどうするの?」
「まずは情報にあった通り、あの『駅』と言う場所から伸びているモノに沿って追跡してみましょう。上手く行けば『ヒト』らしき存在と旅に出たというサーバルさん達と会えるかもですし」
「りょ~か~い! よ~し張り切って行こ~!」
···こうしてダブルスフィアの追跡劇は幕を開けた。モノレールで旅を続けるキュルル達に追い付くのは、少し後の話である······
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ここはキュルルやサーバル達が過ごすパークとは違う、特別な『空間』。 その中で鳥のフレンズと思われる存在が二人、キュルルの目覚めを感知していた。
『ふむ、ついにヒトの子が目覚めたようだな···』
『我が主の願い、叶うやも知れぬ』
『だがまずは我が主の思いを受け止められるか···その器、見極めねばな』
『うむ。ではしばらくはあのフレンズに任せ、我らは頃合いを見てかのヒトに接触を計るとしよう』
謎の空間で怪しい会話をする二人のフレンズ。彼女達の正体は···そして彼女達の『主』とは何者なのか···? 答えはまだ、黒より深い闇の中である······
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後書きです。とりあえずイエイヌちゃんが『何故原作ではかばんさんに接触しなかったか』という疑問を改変して理由付けしてみました。うーん苦しい!
原作ではかばんちゃんは『ヒトのフレンズ』なのか、黒セルリアンに食べられた後『ヒト』に戻ったか明言されてなかったので、この小説では『復活した際に一度ヒトに戻っている→パークを旅する内にヒトのフレンズに戻ったというよりハイブリッド化(一期12話で徐々に手袋が戻ってた→時間経過で徐々にフレンズ化→フレンズそのものではなくハイブリッドな存在→二期で見た目が成長した事の理由付け)』という解釈で行きます。 ただその内完全にフレンズ化→おばあちゃんにはならないと思います(願望
5月11日、フウチョウコンビの扱いを決めたので彼女達の会話を加筆しました。 少々ネタバレをすると、彼女達の主はヒトやフレンズではなく『神様』枠です。
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