魔魂簒奪
閃光が僕の視界を白く塗りつぶすこと数秒。
やっと光が収まり、眼を開くとやはり先程と同じように体が少しの間発熱、そしてカードは消滅していた。
だが、そのかわり……というべきなのかカードを手にしていたはずの右の掌に一つの板状の携帯端末が。
というか、ほとんどスマホがあった。
でも、製品として販売されているそれとは明らかな違いがあった。
見た目にはほぼ違いはない、だが機能面が別物。
まず、出来ることが少ない。というか写真を撮るくらいしか出来ないようだ。
試しに自分を撮ってみる。
パシャッとシャッター音が鳴り響き、画面に写真が表示される……ことはなかった。
「え、なにこれ?」
画像の代わりにこんなものが映し出されていた。
――ステータス
名前:柊木 奏
年齢:18
Lv.2
《スキル》
【鑑定板】
【魔魂簒奪】Lv.1
【】
【】
【】
【】
SP:2
――
ステータス。
そう表示されているが……
「ゲームかよ。しかもレベルとかスキルって……」
非現実的。
アニメや漫画の見過ぎで疲れているのか? と頬を叩いてみたりもしたが、痛い。やはりこれは現実であると認めざるを得ないということか。
まあ、ゴブリンやらスライムやらに出会った以上今更とも言えるが。
「それにしても、あのカードはスキルを手に入れるためのアイテムみたいなものだったってことなのかな?」
【鑑定板】というのはおそらく僕が今持っている端末のことだろう。
それは分かるんだけど、【魔魂簒奪】。これがどういうものなのか見当もつかない。
試しに【魔魂簒奪】と表示されている欄をダメ元でタップしてみる。
すると、画面が切り替わり詳細が現れた。
――
【魔魂簒奪】
摂取した魔石から魔物の魂を奪い取り、その魔物の持つ能力を体に宿す。
自身の力で打倒した魔物の魔石を取り込むことでのみ発動可能。
ストック数はスキルLv.×1つまで
――
「魔石……もしかしなくてもこれのこと、だよなぁ」
スライムを倒した際に出てきた宝石のような小さな石。
それを手の中でコロコロと転がす。
「摂取ってことは、これを食えってか?」
別にグロテスクなわけではないし、それ自体に忌避感もない。
だが、食えと言われると話は別。
石を食えと言って食う奴が果たしてどれくらいいるだろうか。
少なくとも僕はわざわざ食べたいとは思わない。
けど、やはりここでもまた僕の好奇心が疼きだす。
この石を、魔石を食べることでなにが起こってしまうのか。
気になって気になって仕方がない。
「覚悟を決めるか」
好奇心と疑惧、一瞬の葛藤。
勝ったのは大きすぎる好奇心だった。
もはやこの好奇心は止まらない。
魔石をつまみ、口に含む。
喉を通り、胃袋へと落ちていく。
今のところ体に異変は見られない。
心配は杞憂だったか。
そんな風に安堵の息を漏らした瞬間。
体が熱を持った。
腹の中を焼かれているような激しい熱を感じて身悶える。
あまりの熱さに地面を転げ回って額には大粒の汗が浮かぶ。
だが、それも一分もしないうちに治った。
ハァハァと息を荒げ、汗だくになった僕は体にどこか違和感を感じた。
ふと、地面に落としてしまっていた【鑑定板】の画面が目に入る。
【魔魂簒奪】、その詳細欄に新たに追加されている項目を見つけた。
――
能力追加
・スライム
能力:適応、液状化
――
僕がさっき飲み込んだ魔石はスライムから出てきたものだ。
それによってなのかスライムが持っていたらしい能力をスキルとは別で使えるようになったみたいだ。
その能力というのが、適応。そして液状化というものらしい。
またもや画面をタップして詳細を見る。
要約すると適応というのはどんな環境、攻撃にも適応出来るようになる能力らしい。それならなぜあのスライムはあんなに簡単に死んだんだって話になるのだが、どうやら適応する前に死んでしまったら意味がないみたい。
つまり無駄に攻撃を加えて弱らせるよりも一撃必殺で殺すのがいいってことだね。
次は液状化の能力について。
これは言葉通りのスキルで、体を液体化させることができるようになる能力で、しかも、その液状化した体もある程度なら操れる。
他にどんなスキルがあるのか分からないけど【魔魂簒奪】って相当良いスキルなんじゃないかと思い始めてきた。
【鑑定板】に記載されているスキルが入る枠は残り四つ。予想の域を出ないけれど、取得出来るスキルの数はあと四つなのではないだろうか。
だとするなら、このスキルの有用性が更に高まる。
詳細を見た限りでは適応と液状化の能力も戦闘を考えた時、強力な力となる。
僕はもしかしたらとんでもない発見をしてしまったかもしれない。
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