第九話 願い

僕は後ろを振り向き、そして…

「え…」

絶句した…だって、そこには…

「なんで…お前が…」

そこには美雪が立っていたのだから… 

「こんにちわ。私の名前は美雪です。」

「えっと、倉橋 健です。」

とりあえず自分も名乗っておく。やっぱり美雪だった。でも、何故、今病院にいるはずの美雪が僕の眼の前にいるのかがわからない。そうやって、僕が考え事をしていると美雪が僕の方をずっと見ていることに気付いた。

「僕の顔に何かついてますか?」

とりあえずそう聞いてみると、

「いえ、ただ私の兄と同じ名前だし似ているからびっくりしちゃって。」

そう言って美雪はかすかに微笑んだ。

「僕とその人はそんなに似ているんですか?」

「えぇ、それはもう瓜二つですよ。」

そんなに似ているとはこちらもびっくりしたものだ。

「それで、美雪さんは何故この桜に?」

僕がそう聞くと、

「多分、あなたと同じですよ。願いを叶えてもらうためです。」

「どんな願いですか?」

そう聞くと美雪は少し寂しそうな顔をしながら、

「私の兄、倉橋 健君から、私と私との思い出を消して欲しいという願いです。」

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