第57話  次の駅で降りるよ



母親に連れられて叔父さんの家に行くのは初めてだった。


新次郎はまだ5歳だったから、母親の12歳上の兄の叔父さんに会うのは3回目くらいだった。


母親は6人兄弟の末っ子で、今日会うのは一番うえのお兄さんだった。


叔父さんは、新次郎の家から電車で一時間くらいかかる。


5歳になった新次郎には、大好きな電車に乗れるのはもちろんだが、何より母親とふたりだけのお出かけが楽しかった。


母親は普段忙しく、日曜日も仕事だったので、兄弟たちと休日にお出かけするのは父親だけのことが多かったからだ。


始発駅から電車に乗り込んだ。


クローズ式の座席の窓際に座ることが出来た。しかも、進行方向だ。


流れていく都会の景色を大人の体に邪魔されずに見ることが出来る席は、子供にとって何よりも楽しい。


電車が発車して、30分くらいたつと、車窓の風景が明らかに変わってくる。都会のビルは姿を消し、田んぼや畑が広がる、いわゆる「田舎」が目に付くようになる。


叔父さんの町は海が近い。


もし時間があれば、海岸に行くからと母親に告げられていた。


わくわくしていた。


この路線は駅と駅の間が長い。


駅につくと、新次郎の前の座席の大人がいなくなった。これで、前の人の顔を気にすることなく風景を見られる。どうしても、子供だから、知らない人が目の前にいると、なんだか恐い。


長いトンネルを抜けたところで母親が言った。


「次の駅で降りるよ」



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超ショート あてはあるの? egochann @egochann

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