第44話  父親のような

「俺、お前のこと父親のような目でみているんだ」


おいおい、ちょっと待ってよ。


口うるさい父親のことを思い出した・


いくら11歳年上だからって父親はないでしょ、と彼女は思った。


「別に説教するとかじゃなくてさ。心配なんだよ」


愛情じゃなくて、肉親のような心配だってこと。


「ずっと年下だからさ、子供に見えちゃうんだよね」


それを言うかい。じゃあ、やっぱり年相応の人と付き合おうかしら。


「あっ、ごめん。年上だからって上から目線じゃないから」


充分上からものを言ってるんですけど。


心配ってどういうことよ。


私のことが信用できないってこと。


「信用はしてるよ、もちろん」


だったら黙ってろよ。


あなたとは年上とか関係なく、会っていて自分が自然でいられるからっていうことに全然気づいていないよ、この人。


でもいちいち言い訳なんかしない。


どうせ私から離れるなんて出来ないんだから。


それが分かっている限り、私も別れないわよ。


彼女は心のなかでつぶやいた。

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