第38話 大丈夫だった?

「大丈夫だったの?」


「良性だったよ」


「安心したわ」


ポリープを切除し、組織検査で良性だったのが分かったので妻に電話した。


「ひとりで帰ってこれる?」


「病院のバスで駅まで行けるからそれで帰るよ」


妻は人一倍心配性だ。


彼の母親ががんだったときも心配しすぎて寝込んでしまうほどだ。


人の親でもそこまで心配するのだから、自分の親がそうなったときはどうなるのかとつくづく心配になるのだった。


息子の受験のときもそうだ。


息子本人はけろっとしているのに、合格発表の1週間まえから、


「眠れない」


と暗い顔で訴えてくる。


「今から心配してどうなるんだ」


発表当日なんか、顔の色が土色になって、憔悴しきっている感が凄くて彼のほうが家から逃げ出したいほどだった。


愛情深いといえばそうなんだけど、行き過ぎだよな。


彼もやや心配性なので、妻がもっと楽天家であればもっと楽に生きられそうと何度もおもった。


「仕方ないさ」


駅までのバスには、夕方の買い物に行く主婦の姿が多く見られた。


「ともかく、良性で良かった」


彼は、少し開放感を覚えた。


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