第36話 おかげさまで

「おかげさまで」


取引先の課長から電話があった。


岡島が都合をつけてやったシステムエンジニアがシステムを回復させたからだ。


「いいえ、いつもお世話になっていますから」


岡島にとって仕事はいつも人とのつながりがすべてだと思っている。


どんなにテクノロジーが進化しても、人の営みは人との関係が重要なのは変わりない。


「コミュニケーション能力がないと仕事が上手くいかない」


当たり前のことが最近やたらと声高にが、岡島にしたら、


「何をいまさら」


という感じだ。


新入社員の目に輝きがなくなったのは、最近のことではない。


表面は、はきはきしていても、裏の顔は人を拒否している。


人との関係を根本的に拒否してる。


自分は、正しい、やれる、人から干渉されたくない、そして、根拠のない自信がある。


そんな彼等と付き合うのは正直骨が折れる。


「将来どうなっていくんだろう」


漠然とした不安がよぎる。


岡島は自分の仕事のじゃまにならなければ、部下がどんな人間であっても関係ないかもしれないとも思っていた。


「人との関係が弱い人間が多い以上俺の出番が減ることはないだろう」


とも考えている。



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