第35話 美貴



「あなたいつもそうよね」





突然旗色が悪くなる。


未貴はいつもお酒を飲むんで酔いがまわってくると人を攻撃しだす。


「はいはい分かりました」


同僚として2年になるけど、未貴は表と裏の顔が違いすぎる。


別に上司や男に良い顔をしているという意味じゃないけど。


「あんた手が遅いんだよ」


「そうそう私はどんくさい女ですから」


逆らうと逆上してかさにかかるのでいつもからみが始まるとおとなしくしている。


こちらが抵抗しないと分かると、とろんとした目になる。


「だよね、あんたはだめな女」


肩を出したワンピースを着ていた彼女の肩の肩甲骨あたりを人差し指で触る実貴。


しょーもない女だなあ、と思いつつ、自分に甘えているのかなあと彼女は思った。


未貴の艶がある長い黒髪を触った。


「今度表参道に買い物行こうよ」


また高い服を買いに行こうとしている。


いや、靴かアクセサリーかな。


「新しいカフェが出来たから行ってみたいんだ」


珍しいね、未貴。洋服じゃないんだ。


彼女は思った。

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