第34話 またやったのか






「またやったのか」







先輩の古賀が呆れたような顔をして言った。


緒方はたまに通勤途中の電車のなかで喧嘩をする。


相手は自分と同じサラリーマンだった。


「ちゃんと立てよ」


「何、満員電車のなかで威張ってんだ」


「あんたちゃんと学校でてんのか」


そんなやりとりだった。


相手が駅に降りると緒方も降りて、相手の胸倉をつかんだ。


「殴るなら殴ってみろ」


「今度見かけたらただじゃすまさないぞ」


つくづく呆れる奴だと古賀は思った。


「お前、そのうち警察沙汰になって拘束されるぞ」


「はいっ」


普段は温和で、怒ったところなんか見たこともこともないのにどうして電車のなかで揉め事を起こすのかわけが分からなかった。


「つまんないからやめとけ」


「そうですね」


緒方も分かっているのだが、いつも自分から仕掛けているわけじゃない。


「でもむかつく奴がいるんですよね」


「相手は頭の悪い奴なんだから、相手にしなければいいじゃないか」


それは分かってるんだけど、


と緒方は思っていた。


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