第32話 部屋案内した女


彼が勤める不動産屋は表通りから路地を1本入った、北側に国道沿いのビルが立ち並んでいて、日中はほとんど日が差すことがない、昼間でもモノクロームのような色合いのする一角にあった。




彼女が店に入って来たのは、午後の2時を少しまわったころだろうか。




「ワンルームで猫が飼える部屋を探しているんですけど」




黒くて豊富な黒髪をひっつめ髪にした、清楚というには歳がややいった感じの、20歳代後半の、勤め人、という風情であった。



「いくつかありますけど、お家賃はいくらくらいをご希望ですか」



「7万円くらいで」



調べると、駅から歩いて数分のところに物件があった。



「お部屋、ご覧になりますか」



「お願いします」



店を出て歩き始めると、カウンター越しには分からなかった彼女の全身を確認できた。



上半身は、細身。



下半身は、お尻の肉付きも良く、脚は細い。プリーツのロングスカートをはいているので、どんな太ももかは分からないけれど。



「スタイルは良さそうだ」




われわれ、男の不動産サラリーマンにとって、何より楽しいのは、若い女性の案内だ。



今、彼はその楽しみを存分に味わっている。



後は、客の女性の性格が穏やかで、いろいろ文句を言われないことと、入居してからトラブルを起こさないことぶらいだ。



だが、彼にとっては、そんなことどうでも良い。




今、この瞬間、女の客の服越しに見透かす肢体の妄想を味わうことのみが楽しみなのだから・・・・
















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