第31話 張り切っていこう



先輩はすくっと立ち上がった。



「張り切っていこうぜ」




今まで顧問だった蛯原先生が異動でいなくなると分かったとき、真二たち部員は呆然とした。




蛯原は、独創的なアイディアで練習方法を開発し、それまで予選で一勝も出来なかった部を勝ちあがれるチームに育てたからだ。




真二たちが入ったときは、ちょうど強くなりかった時でもあった。




「新しい顧問はどうなるんだろ」




チームメイトからは不安がる声が多かった。




「蛯原先生みたいな人はそうはいないってうちの親が言ってた」




そういう子もいたほどだ。




「新しい先生が、蛯原先生の練習をそのまま続けてくれるか分からないしな」




そこが重要だった。




せっかく蛯原先生が積み上げてくれたものを無しにして、また一から作るのは大変だし、もしかするとまた弱いチームになってしまうかも知れない。




先輩たちは3年生だから夏過ぎには終了するけど、真二たちはその後も大会は続く。




「決まったことだ。落ち込んでいても仕方ない。何とか蛯原先生の練習法を新しい先生に認めてもらうことが重要だよ」




「そうだよ、新しい先生は蛯原先生よりもっとすごい人かも知れないからさ」




「だよな、俺たち上級生がしっかりしないとどうしようもないよ」




春休みが終わって誰が新しい顧問になるかすぐに分かる。




先輩たちに頼るしかないな、そうするしかと真二は思った。









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