第27話切り札





絶対に勝ってやる。




ゆり奈には自信があった。




由愛は身長は163センチくらいでバレーボール選手としてはけっして大きくはなく、むしろ小さいほうだが、どの角度にトスが上がっても、強烈なスパイクを相手のブロックを避けて打ち込む力はある。




「由愛を使いたいんだけどな」




コーチが監督にささやいたのをベンチの横にいたとき聞いてしまった。




どうしてスタメンに使わないのだろう。




相手が180センチ以上が何人もいるチームなら別だけど、今回の相手は176センチが最高で、それほど高くない選手が揃っているというのに。




いつか、聞いたことがある。




「由愛って、片目の視力が極端に悪いんだって」




噂だった。




由愛に直接聞くことなんて出来ない。




キャプテンである私だって。




「切り札としてとってんじゃん」




副キャプテンの好菜が言った。




「一回でも試合に出して活躍したらどうせスコアラーたちがデータを取って研究されるから同じなのにね」




「とにかく、一回スタメンに使ってみれば良いじゃんねぇ、たまに臨時サーバーだけじゃあ、宝の持ち腐れだよね」




「切り札は使うから切り札なんだから、使わなきゃただの置物と一緒なのにね」




その日の試合は、彼女たちのチームが3対0で1セットも落とさずに勝利した。




次の試合には由愛の活躍する姿がコートで見られるのかなあと、ゆり奈は思った。

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