第18話超ショート  部屋あります

南青山の交差点のすぐ近くにその不動産屋はあった。


住宅街によくある、地面に面した店舗型のではなく、通りには看板だけが置いてあって、お店は、ビルの2階とか3階にある都心によくある不動産屋だった。


ドアを開けるとカウンターがあって、そこに彼女は座って客対応をしていた。


カップルの先客がいて、彼らのあとに彼女が彼を迎えた。


「部屋ありますか」


彼女は冗談かというように口元を開けて少し笑った。


「不動産屋なので、お部屋は売るほどあります」


顔は笑っていたが、口調は超まじめな感じ。


「マンションで、3階以上で、バストイレ別をお願いします」


「3階以上ですね、高いところがお好きということですね」


「そうなんですけど、そればかりじゃなくて、夜寝ていて天井を見てると、このうえに何人住んでるんだろう、なんて想像すると眠れなくなるんで」


「それ分かります」


意外だった。


まじめそうで、美人の彼女はそんなことに共感してくれるなんて。


だいたい彼は女の子としゃべるのが苦手だった。


彼女もできたことがない。


女の子と話していて、自分の意見に共感されたことなどなかった。


まして、こんな美人になんて。


「じゃあ、お探ししますね」


後は極めてビジネスライクに話は進んでいった。


で。結局今住んでいるところとなったわけだった。


「あのとき、もうちょっと話をつなげておければ良かったのになぁ」


「そんなもんだよ」


友人の正弘はつまんなそうに囁いた。


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