第14話超ショート モアイ像

「ねえ、モアイ像見に行こうよ」


「どこにあんのそれっ」


「知らないの」


「聞いたことはあるけど」


「イースター島にあるんだって」


「どこなのそれ」


「南米らしいよ。太平洋だって」


「行くのにどれだけ時間とお金がかかると思ってるのよ」


「知らない」


「だってブラジルオリンピックのときに、行くだけで20時間以上だって言ってたじゃん」


「お金はいくらくらいかかるんだろうね」


「数十万はかかるんじゃね」


「お金ためていこうよ」


何言ってんだよ。まだマンション買う頭金だって貯められてないのに。と、彼は思った。


彼女は無邪気に言ってるけど、 将来のことを考えてんのか、こいつと彼は思った。


「他はどこにも行きたくないけど、モアイ像のあるところだけは行ってみたいんだ」


じゃあ、マンションも買って、子供も育てて、余裕があればいつか行こうよ。なんて心のなかでつぶやいた。


「いつか連れてってね」


そう言うかと思ったが、彼女は何も言わずにテレビを見ていた。


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