第9話超ショート はよだせや

「はよ出せや」


史也が言った。


彼は史也に呼び出されて彼の家まで迎えにきたのだ。


「どこえいくん」


「彼女の家や。高槻や」


「道混んでへんかな」


「そんなこと今から心配してどうすんねん」


クルマを発進させた。


史也には逆らえなかった。


兄貴の友人でもある史也とは高校が一緒だった。


史也には何度もヤンキーに絡まれているところを助けられた。


大阪市でも底辺の高校にしかいけなかった自分が悪いのだが、それにしても酷すぎた。


あいにく不登校にならずに済んだのはひとえに史也のおかげだった。


その史也に命令されると逆らえない。


「彼女と喧嘩しはったですか」


「どうでもいいやろ」


史也はたばこをふかしながら前を見つめていた。


追い詰められた顔をしている。


そんな史也を見るのははじめてだった。


「・・・・・・」


「・・・・・・」


ずっと無言だった。


史也の指示で彼女の家の近くまで来たらしい。


「ここでいいわ、ありがとうな」


彼女と仲直りしてほしいと彼は強く思った。



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