第8話超ショート すぐ泣く子






七瀬はすぐ泣く女の子だ。


ダンスの先生にちょっと強い口調で言われると涙ぐんでしまう。


研究生の一番年上の麻璃江に、


「もっと声だして」


と、自己紹介の発声で注意されただけで泣いてしまう。


「あの子すぐ泣くけど、泣きまねじゃないの」


研究生の他の子たちの間ではそう陰口を言われていた。


「とりあえず泣いとけばその場はしのげるもんね」


「私なんかくやしくて泣くにもなけない」


泣きまねであろうと、本当に泣いてるにしろ、それが出来る子は得だという意識が女の子には多い。


「結局性格だよね」


「でも裏でいくら泣いてもそれでヲタクたちの人気が上がるわけじゃないしさ」


「っていうか、ウザイだけだよね」


アイドルとしてファンに認知されるまでは、我慢するところは我慢するというのがこの世界だと考える女の子たちは多い。


人気があれば勝ちというのがこの世界だ。


「ヲタクたちは女の子の涙には弱くないよね」


「分かんないけど、ぶりっ子でも性格の強い子のほうが人気でるよね」


確かにそうだった。


最近のアイドルはしたたかさが感じられるほうが結果に繋がっているようだ。


「泣きまねして売れるんだったら私もすぐ泣くし」


「私もそう思う」



「中央へ集まって」


マネージャーの声はレッスン場に響いた。


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