第8話超ショート すぐ泣く子
七瀬はすぐ泣く女の子だ。
ダンスの先生にちょっと強い口調で言われると涙ぐんでしまう。
研究生の一番年上の麻璃江に、
「もっと声だして」
と、自己紹介の発声で注意されただけで泣いてしまう。
「あの子すぐ泣くけど、泣きまねじゃないの」
研究生の他の子たちの間ではそう陰口を言われていた。
「とりあえず泣いとけばその場はしのげるもんね」
「私なんかくやしくて泣くにもなけない」
泣きまねであろうと、本当に泣いてるにしろ、それが出来る子は得だという意識が女の子には多い。
「結局性格だよね」
「でも裏でいくら泣いてもそれでヲタクたちの人気が上がるわけじゃないしさ」
「っていうか、ウザイだけだよね」
アイドルとしてファンに認知されるまでは、我慢するところは我慢するというのがこの世界だと考える女の子たちは多い。
人気があれば勝ちというのがこの世界だ。
「ヲタクたちは女の子の涙には弱くないよね」
「分かんないけど、ぶりっ子でも性格の強い子のほうが人気でるよね」
確かにそうだった。
最近のアイドルはしたたかさが感じられるほうが結果に繋がっているようだ。
「泣きまねして売れるんだったら私もすぐ泣くし」
「私もそう思う」
「中央へ集まって」
マネージャーの声はレッスン場に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます