第7話超ショート おかず

夏の初めの夕方。


昼間の強い日差しの痛みが消えて、町にうすい紫色がかかったような日没前の空気が好き


だなと彼は思った。


会社に戻る途中にいつも通る商店街。


いつも気になるのが、古くからありそうな総菜屋だ。


店頭に並べられたおかずが今日はどれが売れているんだろう、今日はどんなお客さんが来


たのかな。


彼が育った町にも小さな商店街があった。


そこにも総菜屋さんがあった。


いつも同じおばさんが店先で客扱いをしていた。


その店に、たまに、母親に連れられていかれたことがある。


いつも買うのはてんぷらだった。


その味はいまでも彼の心に残っている。


夕飯を食べるときにはいつも兄弟で海老を取り合った。


「やめなさい。お兄ちゃんでしょ」


いつもたしなめられるのは彼だった。


今は実家から離れてひとり暮らし。


会社の人間や取引先の人以外で夕食をともにする機会はもう1年以上無い。


会社に戻って事務作業で残業になることが多いからいつもコンビニ弁当だった。


いつか、いつも見る総菜屋でおかずを買おうと彼は思った。


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