第6話超ショート 嫌になった仕事

「もう辞めたいよ」


同期の大矢が苦しそうに口をひねりながら言った。


俺だって何回同じことを考えたか、と口まででかかったが言わなかった。


「やっぱり課長のせいか」


「それもある。それもあるけど、今の仕事全般に嫌気が差してきた」


「重症だね、まったく」


「まったくだ」


いずれ同期のなかでも途中退社する奴が出てくることは想像出来た。


でも、営業成績でも課中ほぼトップクラスの大矢がそんなことを言い出すなんてあまり想像できなかった。


「正直な話、お前が辞めたいなら、俺を筆頭に同期ほとんど辞めたくなっちゃうぜ」


「そんなこと言うなよ。お前らはお前らだから」


「そうわいかんよ。お前は同期のなかでも出来の良い奴なんだから、影響はあるさ」


「事情は人それぞれだっていうことさ」


「なんか無責任だな、その言い方」


「じゃあ、俺は自分の出処進退までもお前らの意向をみなきゃならんということなのか」


「そこまで言う気はない」


「だろー、だったらいいじゃないか」


「でも、そうもいかん」


「とにかく、お前は何を言いたいんだよ。俺をたんに引き止めたいだけか」


「それはお前の上司がやることだろ」


「だからお前の考えはどうなんだって聞いているんだよ」


「まあ、つまりお前が辞めると、俺も辞めたくなっちゃうってことさ」


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