第4話  超ショート  えさくわす!


ランチタイムに食堂でとなりに座った女たちの会話が聞こえてきた。





「彼と結婚するの?」



やや明るい髪の毛の色の女がパスタを口に入れようとしていたもうひとりの女に話はじめた。


「どうしようか考えてる」


「付き合って2年だっけ」



本日のランチに添えられたサラダの野菜を口に入れながらその女の口調は静かだった。


「2年間のうち半年間会ってなかったけどね」


「私だった結婚しちゃうけどな、彼、なかなかかっこいいし」


「浮気が心配」


「それは言えてる」


「それに毎日えさくわさなけりゃならないし」


いきなり強烈な言葉が胸に刺さった。


「えさをくわさないと」だって。


新一郎は、自分の妻が自分に、


「えさをくわしてる」


なんて思っているのだろうかと想像すると、寒気がした。


「じょうだんじゃないぜ。飼い犬じゃないんだから。こっちは家族のために、嫌いな仕事相手にも頭下げてるっていうのに」


「そうそうえさ作るのめんどいよね」


「だからさぁ、結婚っていうのも微妙だよね」


だったら結婚すんな。


その女たちに言ってやりたかった。



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