第33話 写真

 自宅に帰ると1枚の葉書が届いていた。


『入籍しました。』


かつて兄の妻であった優奈さんからだった。


兄が逮捕された時、彼女は酷く混乱して一時は心療内科へ通っていた。


しかし世間の関心が薄れるのと比例して優奈さんは回復していった。


回復した優奈は正式に兄と離婚した。


僕の周りの女性たちは皆、逞しく美しい。



 僕は久々に、あの『塗り絵』を見たくなった。


2階に上がり机の引き出しを開ける。

そこにしまっていた塗り絵を取り出し開いた。



「!?」



なんと、それはもう塗り絵ではなかった。


「どういうことだ!?」



シゲルの目に飛び込んできたのは、家族写真だった。


両親の新婚時代の写真。

『入籍しました。』


母のお腹に父が優しく手を添えている写真。

『赤ちゃんを授かりました。』


両親とまだ新生児の兄の写真。

『長男誕生。』


兄の誕生日の写真。

『ロウソク全部消せなかったね。


再び母のお腹に父が優しく手を添えている写真。兄が母と手を繋ぎ俯いている。

『2人目を授かりました。』


新生児の僕を抱く兄の写真。

満面の笑顔だ。


そこから先は、ほとんどの写真が僕と兄との2ショットだった。


思いに耽りながらアルバムをめくっていると、一枚の封筒が挾間っていることに気がついた。




それは父が兄に宛て書いたものだった。


糊付けはされていなかった。



迷いはあった。

罪悪感も抱くだろう。



でも結局、僕はその手紙を読んだ。




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