第26話 岬

 岬には展望台が設置され、パーキングアリアとトイレが併設されていた。


平日だからだろうか。

ミツルの他に人はいなかった。


車1台止まっていない。



ああ、これで楽になれる、、、。



ミツルは深呼吸すると、展望台前に広がる柵をよじ上った。


海からの風が頬を撫でる。


今だ、今しかない、、、。



ミツルは目を閉じて柵から身を乗りだした。



その時だ!!



ミツルは凄まじい力で両腕を掴まれ、柵から後方に落下した。

腰から背中にかけて強い衝撃を受ける。


痛みで声も出ず、身動きも取れなかった。

呼吸をするのもやっとだ。


そんな中、俺の耳元で聞き馴染みのある声が響いた。



「兄ちゃん!!」



なんとか振り返ると、シゲルがいた。


シゲルは俺の両腕をしっかりと掴んだまま、尻餅をつく形でそこにいた。



俺たちは互いに言葉を交わすことはなかった。


ただ数秒の間、目を合わせていただけだ。



そして、俺は警察官2人に両脇を固められ、警察車両に乗せられた。




シゲルは警察を連れて俺の元に来たのである。



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