第25話 死に場所

 俺はここへ来る時には決めていた。


誰にも迷惑をかけない方法は1つしかない。



『俺は自らの命を断つことにした。』



妻の優奈、裏切ってごめんな。


綾香、幸せにしてやれなくてごめん。


佐藤先生、どうか綾香を守ってください。


それから弟のシゲル、、、。

犯罪者の兄貴なんていたら一生台無しだもんな。

でも心配すんな。


俺は消える。


何の痕跡も残らないように、、、。



 俺は函館市を出て人目のつかない岬を探している。


日本海の海で死のうと決めた。


適当にバスを乗りついで見知らぬ町で降りる。


バス停留所は老朽化し、その周辺の民家も古い造りのものが多かった。


漁師の家だろうか。敷地に浮き玉と網が山積みになっていた。


辺りは磯の香りに満ちていた。


俺はしばらくの間、海沿いの道を歩く。


いくら歩いても、ほとんど景色はかわらない。


古い作りの民家と老朽化した空き家が立ち並ぶだけの長い道のりをひたすら歩いた。


やがて、建物さえもなくなった。


山と海に挟まれた国道の歩道をひたすら歩いた。



俺は本当はどうしたかったのだろうか。


優奈のことは嫌いになったわけじゃない。

しかし、そもそも、俺は優奈を好きだったのだろうか。



綾香のことは正直、好きかどうかわからない。


俺は綾香に自分を重ねていたのだろう。

親の愛情が欠落している綾香を守ることで、俺は自分の寂しさを埋めていたのだ。


偽名まで使って、、、。



弟のことは正直、あまり考えたくない。


あいつがいなければ、俺はもっと自分らしくいられただろうか。


父さんにもありのままの俺を認めてもらえただろうか。



俺は一体、何を望んでいたのだろうか。


しかし、もはやそれも、どうでもよくなる。



全て消えるのだから。



ふと足を止め見上げると、高台が見えた。


さぞかし眺めがいいだろう。


もう少しだ。


もう少しで解放される。



ミツルは高台に向かって歩きだした。


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