第17話 巻き込まれる覚悟

 佐藤由紀子は顔立ちのはっきりした色白の美人だった。

目の下にうっすらクマが出来ている。

先程の印象と同じく30代半ばくらいに見える。

ほとんど化粧はしていないようだ。


彼女は僕の目を真っ直ぐ見据えて言った。


「まず、あなたの事情を聞かせてもらえるかしら。」


僕は頷いた。


「僕は今、兄を探しているんです。

数日前から連絡が取れません。」


僕はなるべく余計なことを言わないように気を引き締めた。


「あなたは、ここにお兄さんがいると思った?」


「いえ、、、。」


「じゃあ、あなたが何故ここへ来たのか当ててみせましょうか。」


「え、、、。」


「あなたのお兄さん、ミツルが不倫していた相手を探しにきた。違うかしら?」


僕は確かに、兄と行方不明の女子高生に接点があるだろうとは考えていた。


しかし、その女子高生と兄が不倫をしていると確信が持てずにいた。


正確には兄が不倫をしているなどと考えたくなかったのだ。


ここへ来たのも、塗り絵の教示によるものであるが、まさかそれを目の前の人物に話すわけにはいかなかった。


僕は慎重に答えた。


「確かに兄が不倫をしていた可能性は視野に入れていました。しかし、確信していたわけではありません。兄は本当に不倫していたのですか?」


佐藤由紀子は小さくため息をついてから言った。


「本当よ。」


僕の胸の中で何がが疼いた。


「あなたがこっそり見ていた、黒い帽子にマスクをしていた子が相手よ。今、妊娠3ヶ月。」


僕は考えていた。


尋ねたいことは沢山あった。


しかし、、、何から聞いたらよいか、、、。


僕の脳内はパニックを起こしかけていた。


彼女は、そんな僕の様子を見て言った。


「ショックよね、突然こんな場所に連れて来られて、そんな話聞いたんじゃ、、、。」


僕は黙って頷くしかなかった。


「じゃあ、私のことから話しても構わないかしら。長くなるけれど、、、。」


彼女の目には何故か悲しみの色が滲んでいた。


「聞かせてください。」


僕は覚悟を決めた。





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