第3話カップ酒
長い雨がやみ、久しぶりの太陽が雲の隙間からのぞかせた。
久しぶりに、彼が謎を持ってやって来た。
ホームズにあこがれている彼が、次に持ってきていたのは、校庭の隅の木のそばにおいてあったと言う。カップの酒であった。中身はなくふたも無かったのだ
ただ、すぐにわかり得ることは一つだけある。 汚いと言うことだけである。
「ちょっと見せて」
だが、あることに気がつく、それは中が以上に綺麗であることであった。
「君が、コップの中を洗ったのかい?」
「名探偵の僕がそんなへまをすると思うかね」
力を入れて発せられた声に、少し体のバランスを崩しかけはしたが、持直し彼に「すまない」と落ち着いてと手でなだめて、僕は、質問を続けた。
「なら、カップはこの状態で倒れていたのかい?」
「いや、それがワトソン君違うんだよ」
「すまないが、君はホームズというアダ名に喜んでいるだろうが、僕は別に(ワトソン)にそれほど興味がないんだ、
(土山 武則)って名前があるんだから、武則って言ってくれないかな」
一瞬、ホームズに間が空き、返った言葉は「嫌だ」であった。
彼が、即答で答えてきたことに、何の不思議は無かった。その永遠続くであろう問題を僕から辞めることにした。
「アダ名は後にして、君が見たことを話してくれないかな」
「それが立っていたのだ、中身が空のまま、不思議だろう」
確かに不思議ではあった。冒頭に話したであろうが、昨日まで、三日長い雨が降り続けた。
カップの中に溜まるはずの雨水がないのもおかしいのもそうだが、立っていることが一番の問題だ。
何故にたたせる意味があったのか?
「ホームズ、君は辺りに何か物がなかったか、調べなかったかな?」
「ワトソン、君が気にするモノなんて見なかったけどね」
「本当にかい?」
「本当だとも、いや多分かな???」
「どっちだい・・・なら、今からその場所に行ってみるか」
二人しての行動が近頃多くなっているのは、嫌々言いながらも、ついて行くのに半分ほど、楽しみも感じ始めていたのかもしれない、そんな自分が嫌だ。
机に戻り寝たい。
着いたのは、体育館の裏の入口にある木の下であった。
「そこに置いてあった、」
指をさした方を見ると、やはり木の近くに無造作におかれたことがわかる。
「てっきり、墓のお備え物のために置いてあったのかなって思ったんだけどね、」
「それはは僕も考えた。だが近くにそんな痕跡はなかったしね、」
「しかし、あの金網の隙間は、整備した方がいいと思ったがね、」猫が入れる程の大きさの穴がそこにはあった。
僕はめんどくさくなり、近くの部活にこの場所で何かなかったか聞くことにした。しかし、バレー部・バスケ部に聞くが、何の収穫もなく終わった。
だが、ふとホームズは考えた。木の近くばかり探していたから、その名前を見つけられないのではないかと、すると側面を見た所、地面から三十センチ程の辺りに、ナイフか何かで彫られた(ピーちゃん)の文字を見つけた。
その後、三ヶ月前に女子バレー部の(三上 )と言う人が、体育館の扉前で鳥を保護したって話してたよと聞き、その女子に会うことにした。
その女子に会って話しを聞くと、やはり彼女がピーちゃんの死骸を木の下に埋めて、大きな墓にしたとのことであった。
ピーちゃんはカラスの雛で、巣から落ちたところを助けたらしいが、一ヶ月しないうちに亡くなり、巣がある木の下に埋めることにしたとのことであった。
「また、僕らの手で謎が一つ解けたね。」
彼は、またウキウキしながら、帰るのであったが、僕には一つ腑に落ちないことがあった。
流れた水の謎だ。ホームズが帰った後に彼女に聞いたのだが、墓の水換えをしたりお供え物したりしてたのもはじめのうちで、今はしてないことがわかった。
しかし、ここ一ヶ月間にコップの水換えをしている人物がいたとのことで、水量はバラバラで、少ないときや多いとき等あり、雑にいれているとのことであった。
「時々、花も置かれていて、ピーちゃんも喜んでいるかな」
彼女は、嬉しそうに話していたが、気になってしまう。
ある日、カップに水を汲んで一日待っていると、夜中に誰かが金網の穴から、手を入れてゴソゴソしている。
その後、カップに花を挿して逃げようといたところを捕まえる。
正体は、近くの煙草屋の主人であった。金網の近くのレンガを開けるとアルミ缶の中に煙草の束が入っていた。
真相は、煙草屋の横の駄菓子屋で主人である男が、中学生に煙草を売ったことから始まる。
その中坊は、バレー部のキャプテンで、その後隠れて煙草を買うために、体育館横の金網に穴があることを教え、その近くにレンガがあるので、その下に 隠すのを決めた。
買うときの合図が、水の量により買う値段を決めていた。
そして、値段に値する煙草をアルミの缶に入れて、煙草を置いてる合図が、一輪の花であった。
その後、煙草を買い手が取り出すと、その分の金を払う仕組みであった。
雨の日にカップが満杯の量になってしまうと、誤って煙草を買うことになるので、それを防ぐためにカップを裏返しにしていたのだが、雨が降った前日に水が溜まっていなかったことが、彼らの敗因はそこであった。
完
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