雨のち晴れ
砂をゆっくりと落とし続けているような、そんな音がする。僕は目を覚ました。薄いカーテンの向こう側では、もう一回り薄いかもしれないオンボロ窓が、水滴を何個もつけて泣いていた。
すっと、何かが抜け落ちた気がした。カーテン越しに見たその景色が、透けて見える彼女の心のように思えたのだ。嘘が下手な、僕の大好きな人。彼女は今日、僕程度では届かないどこか遠い場所へ行ってしまった。眠気眼が覚醒し始めると、僕にも同じ分だけの涙が滴り落ちる。悲しいのだろうか、それとも空しいのだろうか。心どころか体自体が穴になってしまったかのような、そんな感覚と共に僕は上体を起こす。
全てが無意味だった、と思いたかった。そう思えれば、僕は安心して首をくくれる。しかし、そう思えないからこそ僕は今日もここに居て、たぶん明日もここに居る。
あらゆるものが、僕を置き去りにするんだ。
景色、時間、彼女、そして僕。幸せだった僕は、今の僕を追い越してどこか行ってしまった。
晴れない日はない。だから、雨はいつかやむ。やんだ時に、僕はもう一度考えなければならない。果たして晴れ景色に、身を投じられるかどうかを。
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