人生解雇

 天使がいうには、生きることそのものが仕事らしい。この世界で生きている人間と死んでしまった人間の割合、実は一切の乱れなく数が等しくこの世界は回っている、と。数が合わなくなった時は、上手い具合に生み出して調整するらしい。それが人類の繁栄の真意だとは、思いもしなかった。

 僕は現世で死んでしまって、今はこうして生き死にの中間に位置する存在として、だだっ広い廊下の中央をぼうっと突っ立っていた。これから僕は、生きる者か死ぬ者か、見定められるらしい。

 死んだら天国か地獄が待ってる、なんて嘘っぱちだった訳だ。僕はそのどちらかに行きたかったのに、就職先は極端なこの二つしかない。だから、この場所で更に死んでやろうとも思ったのだが、二三度確かめてからやめた。まるで痛みも感じやしない。

 神様がいうには、死ぬ者に就職を果たすと、永遠に何もない部屋に閉じ込められるらしい。僕は、それはお断りだった。かといって、これでもう片方を選んでしまっては元もこうもない。自分で自分の命を絶っておいて、今更もう一度生きようとは思えない。

 だから僕は、この廊下でずっと待ち続けることにした。幸いここにいても、何故か奴らは催促もしてこないし、君を待つには最適な場所だ。

 これから何十年何千年、この時が流れない廊下を僕は寝そべり続ける。ああ、今日は何度寝ただろう、なんて考えながら。

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