回れ右

 右に回れといわれて、僕は左に回った。暑い六月の校舎、そこの一角で僕の体は宙を舞う。どうやらイケないことだったらしい。先生は顔を真っ赤にして激怒し、僕をその後も殴り続けた。僕は殴られながらも、自分自身のこの処遇について疑問を抱いていた。

 ――右から回っても、左から回っても、止まる場所は同じだし見る景色も殆ど変わりない。

 僕は果たして何故殴られているのだろう。そう真上を見上げて思い続けた。どこからか、ようやく駆け付けた他の先生たちの狼狽が気持ち悪く感じて、僕は耳を塞いだ。頬に打ち付けられる平手の感触と、そよ風に弄ばれる感触を重ねたりして、そのまま目を瞑った。

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