アラワレル
拭い切れない私の涙を。拭うことすら諦めた私の涙を。枯れることを諦めた私の涙を。
人は私のこれを欠点といった。私も自分の涙が嫌いだった。条件もなく、突然鳥が飛び立つみたいに流れ出る涙が、人生において邪魔でしかなかった。だから私は人と関わることを辞めた。人と関わっても関わらなくても涙が溢れるのなら、私の涙に価値はない。ありふれた出来事は普遍でしかないからだ。私が中学を超える頃には、私の涙は無視して然るべきものだと思われていたし、私が部屋に閉じこもったところで、誰も私を咎めなかった。それが私に対しての世間の扱いとやらだった。だから私も、世間が私を扱う程度に見てやった。
――人は一人に耐えられても、孤独には耐えられない。
どこかのアニメでいわれていた台詞。私は今、それを思いだしていた。
目の前の彼は、私の涙が好きだといった。普遍的な、それよりか退屈って言葉で片付けられてしまいそうな私の涙を、この男は特別だと謳った。
それがとても憎らしくて、どこか満ち足りたような感覚を味わう。
――あ、これ泣くな。
私が思った通り、私の目からは取り留めもなく涙が溢れ始めた。私がそうしていると、男は再び顔に笑顔を形作る。その憎めない顔に、私はどうしようもない気持ちを味わいながら、そして、また、泣いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます