真夏

 真夏のプール帰り、夕方に差掛ったこの街で私は君の幻覚を見た。それが電柱と重なった野花の影だったと気付いた時には、私は勘違い空しく、涙を流していた。

 ――どうしても私は諦めきれない。

 君を失った十年前と、今に至るまでの月日。私は今、時間を逆行し続けている。昨日から去年と、そのまた去年と君と出会った日まで。手に入らないものを求めて、私は旅を続ける。

 追いかけている時間が何よりも楽しい、なんて詭弁であることを証明する為に。

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