ほどけた髪
君がその髪留めを解くと、私の心は浮き彫りになった。
地面に足を付けている感覚を無くして、浮遊感と激しい動悸と、体が縮こまってしまったみたいに四肢を硬直させて、君のぼやけた体躯に釘付けになる。
だが話しかける勇気はなく、三年間の生活はファストフード店で料理が提供されるスピードぐらい、刹那的に終わった。
来春、新品のスーツを着込んでふと訪れた並木道。桜舞う度に心の底から剥がれ落ちていく何かは、私を感傷的にさせるには十分過ぎた。
遠くの学校では、吹奏楽部が何やら演奏している。それを聞き終わるころには、私の傍を通っていた同じ会社か、その近辺に就職することになったのだろう新入社員たちは、皆目姿を消していた。
一人佇む桜並木道。涙を媒体に気持ちを垂れ流す私の背後から声がかかった。
私は振り返る。戦慄した。
もう二度と会えないと思っていた彼女は、僕を惑わせたときみたいに髪を風でなびかせると、桜散る真下で、私と同じく涙を流した。
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