マッチ棒
空では、もう既に月がフライングして太陽を押し出そうとしていて、それに急かされた太陽が急ぎ足で水平線の向こう、海の底へ下って行っている。
沈没していく太陽は別れ際の残り香なのか、淡いオレンジ色に海を染め上げるが、それはかえって無様に見えた。
私はそれを見つめている。世界の主役が潰える瞬間をひっそりと、見えもしないナイフを握りしめて崖の上を突っ立っていた。
太陽が運び出した活性は、私の唯一の居場所を照らして消し去ってしまった。誰も、救われることなんて望んでいなかった。
スポットライトを浴びた道化は、物語の終盤、主人公たちに今までの清算かと思えるほどの仕打ちを受けた。私もそうだ、この小さい体に釣り合わぬ、巨大な罪をもって生きている。
周りが囃し立てた私の罪は、劇場の裏側、誰も見えない場所で朽ち果てる。救済とは、個人個人の好都合でしかないのだ。
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