第477話 東雲さんと先輩達

あの後、妹とはちょい気まずくなって俺から話しかける事はしなかった


一応は返事もするけどさ……

何でコイツはあんな話をした後だってのに、平然と会話できるんだよ



夕飯を食べて、風呂入って、ベッドで横になる

目覚ましもセットしたし、さっさと寝よ








そして、翌朝

今日も南城さんと堀北さんが俺と一緒に登校する為に家に来た


南城「おはよ!」


俺「うん、おはよ」

昨日の妹の話を聞いた後だと……何か、2人の目を見るのも少し気まずいな


堀北「どうしたの?」

挙動不審だけど、気にしないで!!


俺「どうもしてないよ?それより、早く学校行こ」

東雲さんとも合流して、2人に文芸部(同好会)に入ってくれないか聞かなきゃいけないし


堀北「ええ、そうね」

南城「今日こそ私も何か手伝えるように頑張らなきゃ!」


2人の会話に適当に相槌を打って登校するのは、いつも通りだから

変に思われる心配はないだろうけど

できるだけ、いつも通りを心がけて行こう





学校に着いて、教室に行くと

東雲さんが、数人の女子に囲まれていた


南城さん達は……トイレにでも行っちゃったかな

居ないな

とりあえず、少し観察してみるか











何か、普通に話してる感じじゃないな……

揉め事か?

こういうのはあんまり得意じゃないけど、割って入るか


俺「東雲さん、おはよ」

囲んでる女子の後ろから東雲さんに声をかける


東雲「あ、Aくん」

おう


俺「話してるとこ悪いけど、東雲さんに用があるんだ。どいてくれないかな?」

これで大人しく引き下がってくれると助かるんだけど……


「はぁ?あたしらの方が先に話してんの、見てわかんない?」

いや、俺の声聞こえてた?

“話してるとこ悪い”ってちゃんと言ったよね⁉


俺「悪いね。でも、俺も大事な用があるから」

この女子……うちのクラスじゃないな

もしかしたら学年も違うか?


「大事な用があるのは私達も一緒なの。順番くらい守りなさいよ」

う~ん……困ったなぁ

確実に東雲さんが絡まれてるよ

こういう時、四季島がいると便利なんだけど……なんで今日に限って来てないんだよ


俺「順番、か……なら、やっぱり俺の方が先だな」


「はぁ?」


俺「俺は昨日から約束してたんだよ」


「昨日は昨日、今日は今日よ」

無茶苦茶だな


俺「困るんだけどな。文化祭の事で相談したい事があったからさ」


「アンタ、口の利き方に気を付けな。私らは年上だよ?」

ふ~ん……そうか

やっぱり先輩か

受験とか忙しいだろうに、余裕だなぁ


俺「え?先輩だったんですか?てっきり1年かと思いましたよ」

幼稚過ぎて


「喧嘩売ってんの?」

まぁ、ありていに言えば

そうだけど


俺「どうですかね」

ほら、怒りの矛先をコッチへ向けろ

東雲さんから、注意を外せ


「ちっ、うっざ」

知ってる!


俺「よく言われます」

主に南城さんや堀北さんを狙った野郎から


「アンタ、なんなの?この子の彼氏?」

なんでそう思うのかなぁ

寧ろ彼氏だったら、掴みかかってでも止めに入るんじゃない?


俺「違いま~す。ただのクラスメイトでーす」

そろそろキレる頃かな?


「お前、マジでウザいよ?」

知ってる~


俺「あ、自己紹介がまだっしたね!俺Aです」

よろ~


「お前の事なんて、どうでもいいんだよ!!!」

そんな大声出したら注目集めちゃうよ?


俺「先輩達は、自己紹介してくんないんすか?」

ほれ、言ってみ?


「するわけないでしょ?きっも」

……今の“きっも”は傷付いたよ⁉

心の底から気持ち悪がってたでしょ⁉


俺「残念だなぁ」

知る事ができれば、色々手が回せたのに


「そろそろマジで邪魔なんだけど?」

「どっか行けよ」


俺「どっか行けって、それはコッチのセリフっすよ~」

あ、やべ

言っちゃった……


「あぁ?」

「邪魔だって言ってんの!!」

ドン!

と肩を押され……わざとイスと一緒に盛大に倒れる

ガッターーーン!!


いってぇ……

分かってはいたけど、床硬い!!


東雲「え、A君⁉」

流石に騒ぎになりだして、少し焦る女子達


でも、もう遅い


南城「ねぇ、何してんの?」

さっきチラっと南城さんと堀北さんが戻ってくるのが見えたからね


「は?何?」


南城「彼の事、突き飛ばしたよね?」


「ちょっと押しただけよ。なのに、わざと倒れて」


堀北「そうかしら?」


「そうだって言ってんの」


両者が睨み合う中、俺は一時退避する

間に入るつもりは毛頭ないからね


堀北「なんで彼を押したのかしら?」


「彼、彼ってアンタら何なの?」

「そこのウザいやつのお友達?」


堀北「貴女たちこそ、何で学年も違うのに来てるんですか?」


「あたしらは東雲さんこの子に用があんの」


両者の間にバチバチと火花が散る

さて、そろそろ出番だぞ


いつまで傍観者をしてるつもりだ、四季島!!

教室の状況を冷静に観察してる場合じゃないぞ!!

入って早々、こんな状況だったら普通は関わろうなんて思わないだろうけど

お前は違うだろ?


四季島「南城さん、堀北さん、どうしたんだい?」


堀北「あら、四季島君」

四季島の名前が出た瞬間、一瞬だけど

ビクリとした先輩がいた

この先輩、四季島の事知ってるんだな


四季島「何があったか説明してくれるかな?」

お前、いっつも爽やかな笑顔だよな


南城「先輩達が、彼の事突き飛ばしたの」


「だから、ちょっと押しただけだって言ってるでしょ?」


四季島「そっか。それで南城さん達が怒ってるんだね」


「四季島……太一⁉」

お、下の名前まで知られてるなんて

さすが主人公クラスのイケメン

有名人だな


「嘘、でしょ?」


四季島「いいえ、合ってますよ。俺は四季島太一です。それにしても、久しぶりですねG先輩」

四季島も相手の事知ってるのか⁉


G「そ、そうね。お久しぶりね」

動揺してる?


四季島「まさか、また俺にしに来てくれたんですか?」

告白⁉


G「ち、違うわ!その、えっと」

完全に混乱してる……


「アンタ、この男子に告ったの?」


G「ちょっとした気の迷いよ⁉」

気の迷いで告白されたのか……四季島も苦労してんだな


「へぇ、あたしらを裏切ったんだ?」

なんか、G先輩が窮地に立たされてる?


G「違う!裏切ってなんか」

少し、可哀そうだな


教室の騒ぎがだんだん大きくなって、他のクラスの奴らが野次馬に集まってきてるな……

このままだと、先生が介入してくるのも時間の問題だな

そしたら、流石に諦めるだろ


と思っていたら、教室の出入り口の方から知ってる声が聞こえた


仁科「何してるの~?」

す、すごい状況になったな

こっちへ来て、ただならぬ空気を察して警戒心を強くする仁科さん


仁科「あれ?もしかして、J先輩?」


J「仁科⁉」

あれ?

今度は仁科さんの知り合い?


仁科「あ、やっぱりJ先輩だ!」


J「なんでアンタが」


仁科「え?私は彼に会いに来ただけですよ?」

俺を指ささないで!!


J先輩とやらが俺を見て、1歩後ずさる


J「あ、アンタ……Aって」

俺、自己紹介したじゃないですか!!


俺「そうですよ」

でも、何で今更?


J「K!ヤバイよ!!」

あ、リーダーっぽい先輩はKって言うんだ


K「何よ?」


J「この男子、アレだよ!気に食わない相手は片っ端から消すって言う」

K「あんた、そんなくっだらない噂信じてんの?」

おい、そんな噂誰が流したんだよ!!


J「だって、おかしいじゃん!この名前無しmob男子の癖に名前持ちネームド女子がこんなに」


K「バッカじゃないの?ただのクラスメイト程度の関係に決まってるでしょ」


俺「その噂って、俺聞いた事ないんですけど……」

本人には聞こえないようにして噂するのって、陰口じゃない?


四季島「お前は知りたくないだろうから、今まで伏せて来たのに……」

え?


俺「四季島は知ってるのか?」


四季島「あ、ああ。あくまで噂になった程度なんだが」

そんな前置きが必要な内容なの?


四季島「お前が、南城さんや堀北さんを気に食わない名前無しを消しているって」

そ、そんな事するわけないじゃん!!


俺「誰がそんな噂を⁉」


四季島「それは知らないが、少し前に他クラスでそんな話をしてる子がいたんだよ」

ま、マジか……

道理で最近は学校では平和だったわけだ

いや、普通は平和じゃなきゃダメだよな⁉


俺「はぁ……俺としては、できれば抹消とかしない方向で話を進めたいのに」

何よりも平和が一番だよ


南城「その話、私達も知らなかったんだけど?」

堀北「私は知ってるわよ?」

仁科「私も部員の子から聞いたよ?」

あれ?


南城「え⁉知らないの私だけ⁉」

いや、俺も知らなかったから


女子「四季島くん!何してるの!」

とクラスメイトの女子が四季島に話しかけてきた


四季島「いや、大した事じゃないよ。何か用かな?」


女子「ううん。ただ、知ってる先輩が見えたから」

「ちょっと」


四季島「それは誰か教えてくれるかな?」


女子「もちろん!F先輩!お久しぶりです!!」

1人の先輩をFと呼んだクラスメイト

これで、判明してないのは後1人


四季島「へぇ、F先輩っていうんですね」


F「なんで言っちゃうのよ!」

「あれ?先輩も四季島君に会いに来たんじゃないんですか?」

F「違うわよ!」


段々人数が増えてきたな

南城さん、堀北さん、仁科さん、東雲さん、四季島、クラスメイトの女子、G先輩、J先輩、F先輩、K先輩……


B「おっす、A。これは何事だ?」

あ、B!


俺「何か、東雲さんがあの先輩達に絡まれてて」

いつの間にか、こんな大事に


B「へぇ、K、J、G、F、L先輩だな」

うん⁉


俺「お前、先輩達の事知ってるの?」

何で?


B「知ってるよ。まぁ、一方的にだけど」


俺「どこでそんな事」


B「あ~~~、ずいぶん前にちょっと調べたんだよ」

うん?


俺「お前が?」


B「いや、俺だけじゃなくて……もう、言っちゃってもいいか」

んだよ?


B「お前には絶対に知られないようにって堀北さん達から言われてたんだけど」

早く言えって


B「学校内限定名前無し女子ランキングって企画を裏でやってたんだよ」


俺「……は?」


B「その時、有志で手分けして名前無し女子のリストを作ったんだ」

そんな事してたのか……


俺「その時に?」


B「ああ、もちろん先輩達も調べた」

それ、知りたいな


俺「その内容って、覚えてるか?」


B「は?お前、興味あんの?」

いや、興味はないけど


俺「今、必要なんだ」


B「分かった、ちょっと待ってろ」

そう言って、一旦ロッカーへ何かを取りにいき

直ぐに戻ってきた


B「ほらよ、これだ現物だ」

手渡されたのは

盗撮っぽい写真と細かい文字でびっしり埋まった紙の束だった

これ、何枚あんだよ⁉


B「えーっと、先輩達は……これがG先輩で、こっちがK先輩とJ先輩とF先輩、で次のページにL先輩の事が書いてあるよ」

なるほど……


えーっと……3-2のL先輩

身長約160cm

スタイル・C+

好きな相手・同クラスの名前持ち石上いしがみ 英輔えいすけ

ファンクラブの幹部も務める


な、なるほど……


俺「な、なぁ四季島」


四季島「なんだ?」


俺「先輩でさ、石上って人知ってる?」


四季島「石上、英輔先輩か?」


俺「そうそう」


四季島「知ってるぞ。多少交流もある」

マジか

お前、すげーな


俺「あの人、L先輩っていうらしいんだけど……石上先輩のファンクラブなんだってさ」


四季島「お前、どこでそんな情報を」


俺「Bが教えてくれたんだよ」


四季島「B……か。まぁ、今はこの状況を解決する方が先か……お前の言いたい事は分かった。任せろ」

お、おう?

ちょっとした情報提供のつもりだったんだけど……?


四季島「あ~、L先輩。ちょっといいですか?」


L「な、なに?」


四季島「貴女がこんなトコにいるのを石上先輩は知ってるんですか?」


L「い、石上くんは関係ないでしょ⁉」


四季島「そうですか。とりあえず、石上先輩に電話してみますね」


L「やめて!!なんでそんな事するの!!」


四季島「だって、このままじゃ収拾がつかないじゃないですか」


L「ちょっと待って!本気なの⁉」


四季島「ええ、L先輩がどんな方が直接石上先輩に聞いて、場合によってはここに来てもらおうかなと」


L「わ、分かったわ……帰るから、だから石上くんには言わないで」


四季島「その前に、何しに来たのかだけ教えてくれませんか?」


L「……東雲さんそこの子に用があったの。もう済んだから、もう来ないわ」


四季島「そうですか。分かりました」


そう言ってL先輩が教室から出て行き

後を追うかたちで他の先輩達も教室から出て行った



俺「四季島、ありがとな」


四季島「大した事はしてないさ。それより、何でこんな事になったのかが気になるんだが?」


俺「あ~、それは……」

東雲さんがどうして絡まれてたか分からないからな……


どう説明しようか迷っていると

担任が教室に入ってきた


担任「全員席つけー」


俺「あ、後でな」

担任が良いタイミングで来たから、何とかはぐらかせたかな?


さて、後で東雲さんから事情を聴かないとな……

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