第476話 妹と真剣な話

学校を出て、真っ直ぐ家に帰る


俺「ただいま~」

返事がない……

ってことは母さんは家に居ないな

妹は靴があるからいるだろうけど、部屋に籠ってるのかな


とりあえず自室へ行って、制服から部屋着に着替える


鞄から台本を出して、最初のページから読み直す

これ……覚えきれるかなぁ……


兎に角、やれるだけの事はやらないとな

最悪、カンペ用意しておいてもらおう


俺「はぁ~……」

今日から頑張って覚えて……2週間弱で完璧にするって事は

えっと……通しで練習できるのは多分2、3日だろうから

暗記に使えるのは10日ってとこだろ?

で、ほぼ全編にジュリエットの出番があるから

最低でも1/10づつでも覚えないとダメって事か

全体のページ数が、これだけあるから……1/10だとこんなもんか?

これくらいなら、何とかなるか?


よし、今日の目標はここまでだな!!



計画を立てたとこで、ドアをノックする音がした

家にいるのは俺と妹だけだ


俺「どうしたー?」

ドアを開けてやると


妹「あ、おにぃ!おかえり!やっぱり帰ってきてたんだね」

何か用でもあったのか?


俺「ただいま」

それだけなら、もうドア閉めるぞ


妹「ちょっと、お話いいかな?」

う~ん……後回しにしたいけど


俺「いいぞ」

どっちにしろ聞かなきゃダメそうだからな


妹「うん、ありがと」

部屋の中へ招き入れてやる


いつも座る定位置にちょこんと座る妹

その正面に腰を下ろして妹の話を聞く体勢をとる


妹「おにぃ、手作りのプレゼントを贈るって言ってたの覚えてる?」

あ……


俺「お、覚えてるぞ」

もちろんじゃないか!


妹「そっか。それでどうするの?」

どうするって言われてもなぁ


俺「どんな物がいいか、全く見当も付かないしな……」

作るってなると、途端に難しく感じるんだよなぁ


妹「う~ん……じゃあ、ネックレスとかは?」

ネックレス?


俺「あれって作れるの?」


妹「チェーンとチャームと留め金しか材料は使わないから簡単な方かな?」

そ、そうなのか……


俺「チャームってのは、どっかで買えばいいのか?」

そもそも売ってるんだよな?


妹「買ってもいいけど、どうせならソコも手作りにした方が気持ちが込められると思うな~」

そ、そういうものなのか?


俺「作るって言っても、金属削ったりは出来ないぞ?」

星形とかハート型とか?

そういうのだろ?


妹「そこまでしなくても大丈夫だよ⁉えーーっと、たとえば……これとか」

スマホで画像を見せてくれる

そこには、カレーの皿みたいな形の物が写っていた


俺「皿?」

なんで?


妹「これは、台座で…ここにパーツとレジン液を流しいれて固めると……こうなるの!」

別の画像には、星空みたいな綺麗なチャーム?が完成していた


俺「おお!凄いな!」

これ、いくらで売ってるのかな?


妹「これなら、おにぃでも作れるんじゃないかな?」

え?


俺「本気で……これ作るの?」

出来る気がしないんだけど……⁉


妹「だって、手作りの贈り物をするんでしょ?」

そう、だけど……


俺「俺にできるかなぁ……」

ただでさえ、台本覚えたりで忙しいのに


妹「できるよ!おにぃは言うほど不器用じゃないし」

う~ん……俺1人だったら辿り着かなかっただろうし

折角調べてくれたんだもんな

挑戦だけでも、してみるか?


俺「分かった。やってみよう」

ネットで買うとなると、材料が届くまで数日はかかるな


妹「やった!!それじゃ、明日買いに行こ!!」

え?


俺「ネットで買えばいいじゃん?」

なんでわざわざ買い物に行くんだ?


妹「おにぃ、全く知識ないのに探せるの?」

あ……そうか

検索ワードが分からない、か……


俺「そうだな……明日買いに行こうか」

そしたら売ってるお店の店員さんに質問もできるし

コツとか教えてもらえれば、上手くいく可能性が上がるな


妹「うん!!」

こいつ……また、何か俺に奢らせる気だな?


俺「用は終わったな?さ、部屋に帰ってくれ」

これから台本を覚えるんで忙しいんだ


妹「ちょっと待って。楽しいお話は終わったから……これからはちょっと楽しくない話しよ」

何言ってんだ?


俺「楽しくない話ってなんだよ?」

テスト……ではないだろ?

なんだろうな?


妹「おにぃ、真剣に聞いて…真剣に答えてほしいんだけど」

やけに“真剣に”を強調するな……


俺「なんだ?」

もしかして、イジメとかか?


妹「おにぃは、もう決めたの?」

決めた?

何を?


妹「先輩達の誰に告白するか、決めた?」

そ、そんなの


俺「お前には関係ないだろ?」

突然何言い出すんだか


妹「関係あるよ。おにぃ、もう時間無いんだよ?このままじゃ、おにぃが名前持ちになっちゃうんだよ?」

それは……そうだけど


妹「それに……あんまり待たせたら、先輩達が可哀そうだよ」

可哀そう、か


妹「おにぃの気持ちを知りたい。おにぃに好きって言ってもらいたい。おにぃに選ばれたい。でも、後悔してほしくないから……急かせたりしないで、ただただじっと耐えて待ってるんだよ」

うん


妹「あのね、おにぃ……告白の返事を待つのって、怖いんだよ?告白する勇気って、相手に断られるかもしれない、嫌われるかもしれない、そんな恐怖に打ち勝つ勇気なんだよ?おにぃが答えを出さない間は、ずっとずっとその恐怖が残ったままなんだよ?だから、選ばれたいって想いと選ばれないかもしれないって恐怖がずっとあるの。それって、すごく……すっごく辛いんだよ」

…………


妹「だから、聞かせて。誰かは言わなくていいから、もう決めた?それともまだ決めれてない?」

それは……


俺「その答えを聞いて、お前はどうするんだ?」

何か考えがあるのか?


妹「どうもしないよ。私の恋はもう終わっちゃったから……最初におにぃに恋して、最初に失恋したんだから。ちょっとくらいお節介焼いても、いいでしょ?」

お節介、か


俺「お前の言いたい事は、何となくわかった。だから、真剣に真面目に……今の気持ちを言うよ」


妹「うん、聞かせて」


俺「すぅー、はぁ~……決めた、と言い切れるわけじゃない…けど、1人の人が気になってるんだ」


妹「そっか」


俺「ただ、まだ自分の好意が本物なのか勘違いなのか分からないんだ。その……不甲斐ない話だけどさ。皆みたいにって気持ちを信じ切れてないんだ。だから、告白はまだできない。もし俺のこの好意気持ちが本物だって分かったら、すぐにでも告白しようと思うんだ……こんな答えじゃ、ダメか?」

情けないよな……自分で自分の気持ちが分からないなんてさ


妹「ううん、ダメじゃないよ。それがおにぃの正直な今の気持ちなんだよね?」


俺「うん」

嘘偽りない、正直な気持ちだ


妹「そっか……なら、もう少しだけ待ってる。おにぃが誰を選ぶのか、楽しみ…だな!それじゃ、私部屋戻るね!ばいばい」

自分から聞いておいて……泣くなよ

泣くくらいなら、聞かなきゃいいのに……ってのは酷すぎるか

あいつを泣かせたのは……


はぁ~~~~~~~……

ったく、こんな気持ちじゃ……練習どころじゃなくなったじゃねーか


そろそろ、限界……だもんな


もし、また名前持ち化したら……間違いなく俺は戻れなくなる

俺は、まぁ……その時はその時って割り切れるけど


俺が名前持ち化するのは、多くの名前持ちと接しているからだって四季島が言っちゃったから……

多分、みんな責任感じちゃう……よな


根本的な原因は、俺の変な遺伝子のせいなんだけどな……



告白する勇気と、……拒絶される恐怖か


俺には、あんまり縁の無い事だったから……少し気楽に考えすぎてたのかな


昔から母さんが『相手の気持ちを考えろ』って、言ってたっけ

あんまり成長してないっぽいなぁ


こんなダメな俺を……どうして、好きになってくれたんだろうな

俺よりも、もっといい男なんていくらでもいるのに……


ってダメだ!

母さんに『自分を卑下するな』って叱られるな


よし、気持ちを切り替えよう



プレゼントの事でも考えよう!!

ネットでさっきアイツが見せてくれたヤツを検索してみようっと

えーっと、アレの名前なんだっけ?

あ、そうだ

台座 パーツ レジン液 で画像検索っと


丸パクリはダメだろうけど、くらいはいいよな?


キラキラ輝くアクセサリーの画像から、作り方の書いてあるサイトを探す

いくつかのサイトを巡って、やっとわかりやすいサイトを見つけた


このサイトにはコツや小技やテクニックなんかも書いてあるし、ブックマークしとこう

明日以降も分からない事があったらココを見れば解決しそうだし


これはいいサイト見つけられたな!

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