第478話 東雲さん、捜索

担任が出欠確認をして、教室を出ていき

入れ替わりで1時間目の先生が入ってきた


これじゃ、話す時間はないな……

仕方ない、授業が終わってから聞きに行こう



東雲さんの事が気になって、チラチラと東雲さんの方を確認する

パッと見は普通にしてるな

本人はあんまり気にしてないのかな?


黒板を見る、東雲さんを見る、黒板を見る、東雲さんを見る

と繰り返して、授業を受けつつ東雲さんの様子を確認する


そして、1時間目の終わりを告げるチャイムが鳴り、先生が何か言って教室を出ていった


すかさず東雲さんの元へ行こうとしたが、俺が声をかけるより先に東雲さんが教室を出て行ってしまった

避けられてる?

いや……そんな事ないだろ

多分トイレだよな、うん


東雲さんが戻ってくるのを待って、それから話をしよう

一度立ち上がっちゃったけど、待ってる間立ちっぱなしでいる必要もない

一旦席に座る


そこへ、四季島がやってきた


四季島「それで、何があったんだ?」

う~ん……


俺「俺が登校してきたらさ、東雲さんが先輩達に囲まれてて。何か不穏な空気だったから」

心配になってさ


四季島「わざわざお前が割って入った、と」

そうそう


俺「案の定、先輩達は東雲さんに絡んでて……何とか追い返そうとしたんだけど、俺の言葉なんて聞いてくれなくて」

もしかして、お前くらいじゃねーの?

俺の話ちゃんと聞いてくれるのって……


四季島「そこに南城さんと堀北さんが混ざったのか」

そうそう


俺「そんで、一触即発の感じになっちゃって……四季島、ホントにありがとな」

あの時四季島が居なきゃ、もっと厄介な事になってたかもしれないし


四季島「いや、いいって。それじゃ、そもそもの原因は東雲さんにあるって事でいいのか?」

う~ん……どうだろうな


俺「それが気になって、東雲さんに声かけようと思ってたんだけど」

すぐに教室出て行っちゃったし


四季島「いないな」

そうなんだよ


俺「多分、トイレか何かじゃないかなって思うんだけど……」

戻ってきたら話を聞くよ


四季島「そうか……南城さん達にも相談した方が良さそうだな」

え?


俺「なんで?」

別に、わざわざ声かけなくてもまだ大丈夫じゃない


四季島「いや、何か嫌な予感がする」

お前……名前持ちなんだから、そうやって簡単にフラグを立てるんじゃねーよ!!


俺「分かった。それじゃ、南城さん達にも話してみよう」

えーっと、南城さんと堀北さんは……あれ?

南城さんしかいない?


俺「南城さーん、ちょっといい?」

南城さんに声をかけると、いつも通りの笑顔ですぐにこっちへ来てくれる


南城「どうしたの?」


俺「あ、うん。東雲さんの事なんだけど」

相談させてほしいな


南城「やっぱり、その事だね。私達も気になってね、今春香が探しに行ってるよ」

え?


四季島「南城さんも、やっぱり?」


南城「そうだね。四季島くんもって事は、残念だけど当たってるかな」

な、何か2人の間で話がどんどん進んでない⁉

俺も交ぜてくれないかな⁉


四季島「ああ。見つかったら教えてほしい」


南城「うん。もしかしたら、四季島くんを頼ることになるかもしれないけど……」


四季島「大丈夫だ。その時は俺を頼ってくれ」

だーかーら!!


俺「俺にも分かるように話してくれない?」

全っ然話が見えないんだけど⁉


南城「えっと……まだ可能性の話だから、大きな声じゃ言えないんだけど」

うん?

ちょっと小声になって、やっと説明してくれる南城さん


南城「イジメ、られてるかもしれないの」

なっ、なんで⁉


俺「それは、東雲さんがって事だよね?」


四季島「ああ、そうだ。あの感じだと、暴力は振るわれてないだろうが……嫌がらせはされてるだろうな」

そ、そんな……


うん?

ちょっと待てよ……?


東雲さんは、昨日なんて言ってた?

遅刻して教室に入りづらいからに居たって、そう言ってたよな?

もし、俺達の知らないところで……もっと、ずっと前から嫌がらせを受けていたとしたら?

その相手と会わない為に、隠れる場所が必要だとしたら?

保健室ってのは、もってこいの場所じゃないのか?


俺「俺の……せいかよ!!」

くそっ!!

俺が教室に来いって言わなきゃ、東雲さんはあんな目に遭わないで済んだだろ!!


南城「ど、どうしたの?」


俺「東雲さん、昨日は保健室にしてたんだよ……」

そう、教室じゃなくて

保健室シェルター登校避難してたんだ


四季島「という事は、以前から……くそっ、俺としたことが」

南城「そんな……私、全然気づかなかった」

家の都合とかで欠席する事もあるって、最初から知ってたから

いないのは、家の用事だとばかり思ってたけど……


3人で悔やんでいると、南城さんのスマホに連絡が入った音がした


南城「あ、春香からだ!」

見つかったんだ……良かった


南城「見つからなかったって……どこにもいないって……!」

う、嘘だろ?


四季島「俺達も探しに行こう」

そうだな

でも……


俺「いや、四季島は教室に居てくれないか?」

その方がいい


四季島「俺が留守番か?」

悪いな

お前だって、悔しいのに


俺「ああ、もしさっきの先輩達が教室に来たら追い返してほしいんだ」

南城さんにも、もちろん俺にもできない事だ


南城「そうだね。教室で待たれた邪魔だもんね」

うん


四季島「分かった。教室ここは俺が守るよ」

よし、これで安心して探しに行けるな


俺「南城さんは、堀北さんと一度合流して保健室とか確認に行ってくれるかな?あと、女子トイレの方もできたら確認してもらっていい?」

あの保険医も、南城さんと堀北さんが言えば話をしてくれるかもしれないし


南城「うん、分かった!」

任せたよ!


俺「俺は俺で、探してみるから」

1人になりたい時の避難場所は、俺もいくつか知ってるし


四季島「見つかったらすぐに俺に連絡してくれよ」

ああ、頼りにしてる


俺「それじゃ行こう」


東雲さんの捜索開始だ


俺「B、ちょっといいか?」

教室を出る前に1つ頼み事をしておかないと


B「ん~?なんだ?」


俺「次の授業間に合わないかもしれないから、先生に言っておいてくれ」


B「腹でも痛いのか~?」

まぁ、そういう事にしておくか


俺「ああ」


B「分かったよ。お大事にな~」

よし、準備完了っと




教室を飛び出して、まず向かうとしたら……屋上か?

あんまり近付きたくない場所なんだけど、四の五の言ってる場合じゃないし

階段を2段飛ばしで駆け上がり、屋上のドアをバンッ!と開け放つ


遮蔽物なんてほとんどない場所だから、隠れる場所はないはず

いない!!

次!!!


校舎裏の方も見に行くか

屋上から一気に駆け下りて、靴に履き替えて校舎裏を見に行く

ここは、それなりに隠れる場所が多いけど

走りながらでも確認できる!

なぜなら、俺も隠れた事があるからな!


しかし、見つからない

後は……体育倉庫か?

でも、教室の窓から良く見える場所にあるし

普段は鍵がかかってるから中には入れないんだよな


とりあえず、行ってみるか


校舎の窓から見られたら、先生に捕まりそうだし陰に隠れながら向かうか

グラウンドを突っ切った方が早いんだけどな……


できるだけ死角に入るように移動して、体育倉庫まで来たけど

1周しても東雲さんの影も形もない

念のためドアに鍵がかかってないか引いてみる


ガコンと音がなりドアは開かない

やっぱり中にはいなそうだな


えっと、後は……さすがに学校の敷地から出てはいないだろうから

校舎の中だな


探すとしたら、人気の少ない空き教室とかだよな

空き教室があるのは……そうか!旧校舎だ!!!



出来うる限りの限界の速度で走って、校舎に戻り

上履きに履き替えて、今度は旧校舎へと向かう


1階から全部確認するのは……時間的に難しいか

どっか、東雲さんが選びそうなあ場所は……

もしかして、部室か?


よし、その可能性に賭けてみるか

居なかったら、もう全部のドアを開けて探そう


俺は3階へ駆けあがる

木製の階段がギシギシと軋む音を鳴らし、全力で上がり

途中の2階の廊下に、見覚えのある人達を発見した


俺「あれは、今朝の先輩達⁉」

なんでこんなトコに⁉


「あっ、アンタ!!!」

ヤベッ

見つかった!!


階段を更に勢いよく駆け上がり、3階にいち早く到着する


3階の廊下の一番奥には、中々開かないドアを必死に開けようとしてる

東雲さんがいた!!!


俺「東雲さん!」


東雲「え⁉Aくん⁉」

驚いて固まる東雲さん

振り返ると階段を上がってくる先輩達がすぐそばまで来ていた


俺「今行く!」

廊下を全速力で走り抜けて、東雲さんの元へ行き

追いかけてきた先輩達と距離をとる


俺「今開けるよ。ちょっと待ってて」

東雲「なんで、君は」

そんな事は後でいいから!

ドアノブを捻って、少し持ち上げてドアを開ける


部室の中へ東雲さんを押し込んで、俺も入りドアを閉める

ぎりぎり先輩達に追いつかれる事なく、逃げ込むことに成功した


俺「はぁはぁはぁはぁはぁ……すぅ~、はぁ~~~~」

こんなに走ったの久しぶりかな

体育の授業ですら、こんなに全力で走った事ないよ



先輩達が部室の前まで来てドアをガチャガチャと開けようとする

しかし、開かず

ドンドンドンドン!!!

と力任せにノックをする


「開けな!!」

「大人しく出てこい!!」

出てこいって、言葉遣いにもう少し気を配った方がいいよ?


俺「はぁ~、一先ず安心かな」


東雲「なんで……なんで来ちゃったの!」

そんなの


俺「心配だったからに決まってんじゃん」

当たり前だろ


東雲「私のせいで君まで……」


俺「水臭いこと言わないでよ。……プールで会った時、東雲さんが言ってくれたんだよ?友達になってほしいって!」

忘れちゃったの?


東雲「友、だち……」

そう!!


俺「俺は友達が困ってるなら、力になるよ。東雲さんの中の俺のイメージは血も涙もない冷血漢なの?だとしたら心外だな」

こう見えて、俺は友達は大切にするんだよ?


東雲「違うの……でも、私なんかを助けたら君まで先輩あの人達に」

そんなの、どうにでもなるよ

あの先輩達が、どうして東雲さんを狙うのか

もし裏で誰かが糸を引いてるとしたら、そいつを突き止めて

後悔させてやる


俺「その程度の事がどうしたのさ。これでも、俺ってば中々にハードな学校生活を送ってきたんだよ」

いきなりハードモードに突入したから、かなり大変だったんだからな


東雲「え?」

知らないだろうから教えてあげよう!


俺「達がに恋をして、告白をした。その日以来、平凡な男子は平凡な男子ではいられなくなったんだよ。常に射殺さんばかりの視線に耐え、時には刺客を差し向けられ、時には計略に嵌められ……死にそうになった事だって1度ではないんだ」

頼りないだろうけど、そこは目をつぶってね


東雲「……その男子って」

そう


俺「俺だよ。東雲さんと会う前から、俺は色々な事を経験してきた。だから、その点に関してだけは頼っても大丈夫だよ」

こんな事で役に立てるならお安い御用だよ


東雲「そんな……でも……」


俺「あの人達程度の嫌がらせなら……俺が全部引き受けてあげるよ。だから、全部話してほしい。どうしてあの人達に」


東雲「……うん。ホントは巻き込みたくないから黙ってたかったんだけど」


俺「残念だったね。俺は多分“巻き込まれ体質”なんだよ。だから、そんな気遣いは無駄かな」


東雲「うん、……そうみたいね」

良かった、少しだけど笑顔を取り戻せたかな


俺「さ、話してよ。俺は東雲さんの味方だから」

とりあえず、四季島や南城さん達への連絡は話を聞いてからにしよう


それにしても……まさか、名前持ち東雲さんをイジメる名前無しmobがいるとはな……

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