第464話 復讐に来た男子

ちょうど練習を始めるタイミングで、妹とRちゃんが音楽室に駆け込んできた


妹「大丈夫⁉」


俺「何が?」


妹「え、あれ?」

どうしたんだ?


俺「何かあったのか?」


妹「えっと……あれ?」

よくわからないけど、何か聞きつけたんだろうな


R「Gって男子が復讐してやるって」

G?

誰だ、それ……?


妹「何か、皆の事悪く言ってたから」

あ~~……


俺「多分、合唱部の元副部長だな」

あいつ、復讐とか考えてるのか……

メンドクサイなぁ


T「大丈夫、かな?」

大丈夫だと思うけど


俺「念の為、警戒だけはしておこう」

何してくるか、見当もつかないからな


妹「うん」


俺「歌詞は……あれかな?」

壁に掲載された歌詞を見つけ、確認をとると


R「お姉さま用に1枚貰ってきておきました!」

ポケットから4つ折りになった紙を出して、俺に渡してくれる

開くと壁に掲載されてる文字と同じものが書かれていた


俺「ありがとう」

さて、それじゃ練習始めるかな


Y「先輩は、まずは聞いててください。妹達みんなが先にお手本で歌いますから」

ああ、そうさせてもらうよ


R「え⁉私も歌うの⁉」


Y「当然でしょ?ほら、準備はいいかしら?」


妹「おっけー!」

T「だ、大丈夫だよ」

U「うん!」

R「うぅ~……苦手なのにぃ」


Yちゃんがピアノで演奏を開始する

そして、4人が歌う



1度で何とかタイミングとかテンポは覚えないとな……


目をつぶって、全神経を集中させて聴き入る




お手本の歌と演奏が終わり、俺も目を開ける


Y「どうですか?」


俺「ちょっと、まだ自信ないけど……そんな事言ってられないもんね。みんなは連続になっちゃうけど、やろう」

歌詞を間違えないように気を付けつつ、今聴いた記憶を辿ってなぞる!


Y「はい」










それから、練習を重ねること……7回

ようやく慣れてきた所で、制限時間になってしまった



妹「体育館の方は先生達が全部やってくれてるはずだから、私たちはいつも通り歌うだけだね」


R「そうだけど……観客みんなの前で校歌を歌ったことなんてないよ……」

校歌を歌う方が緊張するってのも、大変だよな

俺楽器できないから、演奏の方が無理だなぁ


T「大丈夫だよ、きっとなんとかなるから!」


U「そうそう!お姉さまだって付いてるんだし、大丈夫だって!」

いや、俺の方が経験は少ないんだけど⁉


Y「大丈夫だよ、Rちゃん。自覚ないみたいだけど、Rちゃんの校歌って聴きやすくて……私は好きだよ」


R「……ほんとに?」


妹「メンバーを、仲間を信じて」


R「うん」


俺「それじゃ、行きましょうか」



妹たちと一緒に、俺は体育館へと向かった


そういえば……クレープもう1回食べたかったなぁ









体育館の裏に着くと、そこには見覚えのある野郎がいた


「待ってたぜ」

こいつ……元副部長のGだっけ?


俺「何か用?」


「ああ、お前らのステージとやらを手伝いに来てやったんだよ」

手伝い、ねぇ


俺「お気持ちだけで結構よ、手は足りてるの」


「そう言うなよ。わざわざ俺が手伝ってやるって言ってんだからさぁ」

たち?

近くに、仲間が隠れてるのか?


俺「はっきり言わないと分からないかしら?“いらない”と言ったのよ」


「いいや、手伝わせてもらうよ。意地でもな!」

突然掴みかかってきた男子に恐怖するYちゃん達


「もっと派手な衣装にしてやるよ!!」

こいつ、服を⁉


俺「させるか!!!」

男子の手首を掴んで、その手がYちゃんに行かないように押さえる


「全員出てこい!やれぇ!!」

やっぱり、仲間が⁉

くそっ、こいつ押さえるのにやっとで他まで手が回らない!!


って、あれ?

誰も出てこない?


「お、おい!どうした!裏切ったのか!!」

お仲間に裏切られて動揺した男子は、大きな隙を見せた


俺「諦め、なさい!!」

掴んだ手を捻って背中側へ回して、地面にうつ伏せに倒す


「いってぇな!!離せ!どけぇ!!!」

ジタバタ暴れる男子を組み敷いて、動きを止める


俺「今のうちに、中に」

早く行け!!


R「でも」

でもじゃない!


俺「中に行っちゃえば、手出しできないはずだから早く!!」


Y「ここは先輩に任せて行こう」

そうだよ

任せなさい


妹「うん。ケガしないでね!」

大丈夫だよ


T「私たちが先生呼んできます!」

それはありがたいな

このまま暴れられると、こいつがケガするかもしれないし


妹達が体育館の中へ入って行き、それでも諦めず暴れ続ける男子


俺「いい加減大人しくしろって」


「ふざけるな!例え俺一人でも、お前らに」

こいつ、何でそこまでして


「そこまでです。男子生徒G」

その声は……監視者のW・Aさん⁉


G「だ、誰だよ⁉」


W・A「私の事はどうでもいいのです。3年5組、出席番号18番、保健委員会所属、血液型はB型、身長167cm、家族構成はご両親とお兄さんが2人妹さんが1人の4人兄弟6人家族、お父さまのお仕事はとある企業の係長、お母さまは合唱団のソプラノをされてますね」


G「な、な、なんで……」


W・A「他にも」


G「どういう事だよ⁉何で俺のこと」


W・A「アナタが行おうとした事も全て調べがついてます。もう諦めてください」


G「どうやって」

全部がバレた事で、気力が尽きたのか暴れる力が弱まった


W・A「諜報活動は得意ですので。ちなみに、作戦会議は音声データとして残してありますよ」

スマホっぽい機械を出して、操作すると

その機械からGの声が聞こえてきた


G『あいつらの衣装をズタズタにして出れなくしてやろうぜ』

?『そんな事して大丈夫なのかよ』

G『大丈夫に決まってんだろ。こっちにはアイツが付いてるんだ』

?『そう、だろうけど』

G『いいか?俺が足止めをする。その隙に取り囲んで』


G「こんなの、どうやったんだよ⁉」


W・A「アナタから不穏な気配を感じたので、傍受させてもらいました。今後は作戦会議などは傍受されない電波の使用をおススメします」


G「ぼ、傍受って……犯罪だろ!!」

それ君が言う⁉


W・A「そうですが、何か?それと……この、アイツというのは名前持ちの事ですね?」

名前持ちが絡んでたのか……


G「そうだ!だから、お前ら名前無しは」

あ~あ、認めちゃった


W・A「分かりました、ご協力に感謝します。20番から25番は対象者を確保ののち、尋問し情報を引き出せ。26番以降は妹さんたちの警護を続行せよ」

スーツの襟につけた無線で、仲間に連絡をとるW・Aさん


G「な、なんなんだよ!お前ら!!」


W・A「その疑問に答える必要はありません。10番までは捕獲した対象をこちらに連行、自白の音声データを提出し持ち場に戻れ」


W・Aさんが指示を出すと、木の陰などから男子生徒を抱えた大男たちがぞろぞろと出てきた


G「んなっ……⁉J、L、F」

抱えられていたのは、この男子生徒の仲間だった奴らだった


W・A「アナタの仲間は全員確保済みです。諦めて罪を認めますね?」


G「くそっくそっくそっ」



「そこー!何をしている!!」

体育館から大人、多分Tちゃんが呼んでくれた先生が走って出てくる


先生「な、何が」

目の前には項垂れる数人の男子と、俺に取り押さえられたG君

そして、スーツをきた女性


はっきり言ってカオスだ


先生「何があったんだ」


W・A「アナタはこの学校の教員ですか?」


先生「ああ、そちらは?」


W・A「私はそこの方の護衛をしてるSPです。そちらの生徒方が、護衛対象へ襲撃を計画していたので止めさせてもらいました」


先生「護衛?襲撃?」


W・A「詳しい話は、後で。今はそこのGという生徒を引き取ってください」


先生「彼らが何を?」


俺「私達をその……としてきたんです」


先生「襲っ⁉それは本当なのか、G!」


G「違います!ぼくは無実です!!」

こいつ、よくもいけしゃあしゃあと……


W・Aさんがさっきの通話の音声を再生すればバレるってのに……

無駄なあがきをするなぁ



先生が何か言う前に、W・Aさんが音声を全て再生し絶句させて


襲撃を計画していた男子たちとW・Aさんは先生と一緒に職員室へ向かった


その後、どうなったかは……気にしないことにした

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