第463話 音楽室の使用許可

音楽室に着いて、重い金属扉を開けると

中には白い衣装のようなものを来た女子と男子が数人いた


俺「えっと……」

どうやって交渉しよう

こっちの持ってる交渉材料って何があったっけ?


Y「突然ごめんなさい。あなた達は、合唱部であってるかしら?」

合唱部……?


「そうですよ」

と男子の1人が受け答えしてくれる


Y「そう、それは良かったわ。1つお願いがあるのだけど、いいかしら?」


「何かな?」


Y「音楽室ここを少しの間貸してほしいの」


「はぁ……それは、どうしてかな?」

なんで今ため息吐いたんだ?


Y「今日、この後ステージに出るのよ。練習が必要なの」


「ステージに、出る?君たちが?」

何だコイツ……何かイヤな感じのする奴だな


Y「そうよ。文化祭実行委員会から、正式にオファーが来てるのよ」

アンコールステージなんていう、厄介な事を言いつけてきたんだよ


「そうかそうか、で?なんで俺達が場所を譲ってやらなきゃならないんだ?」

こいつら、譲る気は全くなさそうだな


俺「アナタ達はここで今何をしてるのかしら?」


「何って、休憩ですよ?見て分かりませんか?」


俺「わざわざこんな場所で休憩しなくても」


「ここは、俺たちの場所だ。俺たちの好きに使って何が悪いんですか?」


俺「そう、アナタがここの主って事なのね?」


「いかにも。俺は合唱部の責任者だからな」

へぇ、責任者か


俺「そうでしたか……、では詳しそうなので質問してもいいですか?」


「もちろん、いいですよ。俺は優しいからね」

優しい、ねぇ……?


俺「ここ以外に歌の練習に適した場所をご存じないかしら?」

もう、音楽室を使わない方向で話を進めた方が早いな


「さぁ、残念ながら知らないなぁ。何せ俺は、ここ以外で練習なんてしたことないからな」

こいつ、知ってるな?


俺「そうですか、それは残念です」

Y「先輩、私っ」

そうカッカしないでね?

まだ、情緒不安定みたいね


俺「Yちゃん、落ち着いて。大丈夫だから」

イライラしたって、何も解決しないから


Y「は、はい」

さて、ここからどうするかな


俺「困ったわね」


「いやぁ…お力になれず、残念ですよ」

全然残念そうに聞こえないぞ?


それはそうと、完全に手詰まりだな

時間がないってのに、面倒な奴が音楽室を占拠してるし……


次の手を考えていると、スマホに着信が入った


相手は……妹か


俺「失礼、ちょっと電話してくるわ」


「どうぞどうぞ、ごゆっくり」

こいつ、こっちに時間がないって事も知ってるな?


俺「Yちゃんも、一緒に来て」


Y「はい」

一度音楽室から廊下へ出る


俺「もしもし」

妹『こっちは上手くいったよ!手の空いてる先生が歌詞印刷してくれるって!』

よし、いいぞ


俺「それは良かったわ」

妹『そっちは?』


俺「残念だけど、音楽室は使えそうにないわ」

妹『え⁉なんで⁉』


俺「合唱部の部長が貸してくれないの」

妹『え?部長ちゃんが?』

部長……ちゃん?


俺「ちょっと待って……合唱部の部長って男子よね?」

妹『何言ってるの?違うよ?』

はぁ⁉


俺「じゃあ、あの男子は……」

なんなんだよ⁉


妹『もしかして、音楽室にいるのってアイツかなぁ』

知ってるのか?


俺「生意気で意地悪そうな男子よ」

妹『やっぱり、アイツだね。その男子は副部長だよ』

副部長なのか


俺「合唱部の部長さんは、今連絡付かないかしら?」

連絡先知ってたりしない?


妹『わかんない……有名人だから私が一方的に知ってるだけだもん』

そうか……

どうしたもんかなぁ


俺「ここ以外だと、練習できそうな場所ってないかな?」

アイツは知ってそうな雰囲気だったけど


妹『う~ん……ピアノがあるのはソコだけだと思うけど』

そっかぁ


俺「とりあえず、手が空いたらこっちに来てもらえないかな?」

人数が圧倒的に不利な状況は避けたい


妹『うん!できるだけ早く向かうね』

俺「ああ、それじゃ」

通話を切って考える

なぜ、アイツは俺たちに場所の提供を拒むのか……

そこさえ突破できれば解決しそうなんだけどな


Y「あの、Aちゃんは」

俺「無事先生の協力は得られたってさ。歌詞を印刷してくれてるから、手が空いたらこっちに来るよ」


Y「そうですか」

まぁ、今の現状を打開できる手段は未だにないんだけど……


俺「あ~~、困った」

ほんと、どうしよう……


Y「先輩、あれって!」

うん?

Yちゃんが廊下の先を指さしていた


T「Yちゃ~~ん!お姉さまーーーー!!」

え⁉

Tちゃん⁉

と、Uちゃんもいる

あと、知らない女子がもう1人いるけど

あの子が、Kちゃん?


駆け足でこっちへ向かってきた


T「到~着っ!!」

U「はぁはぁ……お姉さま、こんなところで何してるんですか?」

何って言われてもなぁ……


T「中入らないんですか?」

U「もしかして鍵がかかってるんですか?」


俺「いえ、鍵はかかってないのよ。でも……」

Y「中にいる人が、音楽室は貸さないって」

副部長らしいんだよね


T「え?」

U「そんなぁ」

「はぁはぁはぁはぁ……それは、どういう、事、ですか?」

そういえば、この子は……?


T「お姉さま、紹介するね!この子はKちゃん!」

うん、それはなんとなく分かってた


U「合唱部の部長だよ!」

ぶ、部長⁉

なら、話は簡単だな


俺「中にいる男の子に、音楽室を貸してほしいってお願いしたら断られてしまったの」

部長なら、なんとかできないかな?


K「そうですか。ウチの部員がすみません」

俺達に謝った後、すぐに音楽室のドアを一気に開け放った


バン!!と開ききったドアが壁にぶつかり大きな音を立てる


「な、なんだ⁉」


K「ちょっといいかな?」


「げ……Kかよ」


K「アンタら、何してんの?」


「何って、疲れたから休憩してるんですよ。部長こそ何しに来たんですか?」


K「わからんか?アンタらを追い出しにきたんよ」


「追い出す?そんな事できませんよ。だって、文化祭中は俺が部長ですから」

は?


K「部長やない。部長代理や」


「それでも、今日は俺がここの責任者です。合唱部じゃなく、クラスの方を優先した人につべこべ言われるいわれはないですよ」


K「そうか、ならこっちにも考えがある」

そう言ってスマホを取り出し、どこかへ電話をかけるKちゃん



K「ウチです。急にすんません……ええ、ちょっと問題あって、副部長変えたいんやけど……そうなんよ。…………じゃ、そういうことで……ほな」


K「話はついたで」


「だ、誰に」


K「もちろん、センセや」

先生って……合唱部の顧問の?


「は?」


K「センセの許可もろうたから、決定や。たった今から、副部長の任を解きます。一生徒に音楽室ここの責任者は任せられん、よって今から私が責任者を引き継ぎます」


「ふ、ふざけるな!そんな事お前が勝手に」


K「言うたやろ?センセの許可はもろうてんねん。大人しく出て行ってもらおか?」


「俺は認めないからな!」


K「さよか。でも、後ろの子らはウチいう事聞いてくれるみたいやで?」

元副部長と一緒に音楽室にいた生徒達が、荷物をまとめて出て行く準備を始めた


「お、お前ら裏切るのか⁉」


「違いますよ」

「むしろ裏切ったのはお前だろ」

「な~にが、音楽室は俺のモノだ~、よ」

「自由にできるっていうから来てたのに」

「ほんと、使えない」


「そ、そんな……」


K「ほんまにすまへんでした」

一件落着となった所で、Kちゃんが俺達に頭を下げる


俺「いえ、助かりました。ありがとうございます」

それに、Kちゃんの責任ではないから


K「ほな、うちはこれで」

用事があったのに、わざわざ来てくれたんだ


俺「はい」

Y「ありがとうございました」


こうして、音楽室は無事使えるようになった

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