第453話 ステージの後

妹「えー、後1曲ですが……」

もう1回歌うのか?

まぁ、どっちにしろ俺の出番は今の曲で終わりだからな

出来る事はもう、ない!

応援はしてるぞ、妹達よ


U「ちょっといい?」

マイクを妹から借りようとするUちゃん


妹「う、うん」

何をするのか分からないけど、とりあえずマイクを渡す妹


U「次の曲は、リーダーのAちゃん達には秘密で特訓しました!なので、Aちゃん達にとってはサプライズって事になります!」


妹「え⁉聞いてないよ⁉」

マジで聞いてない時のリアクションだ……

妹が聞いてないんだから、俺も知るはずもない


U「実は、元々ステージで演奏する予定はありませんでした。こっそり練習して打ち上げの時に私たちだけで披露する、そんな予定だったからです」

そんな事を予定してたのか


U「だから、2人とも歌詞を覚えてないと思います。歌詞を見ながらでも、歌ってほしいんです!皆さん、それでも……次の曲やってもいいですか?」

観客へ問いかけるUちゃん

静まり返った観客側の中で、まばらに拍手が鳴り出す

その音は、どんどん増えていき

会場である体育館の空間全体を震わせるほどになった


観客の了承を得て、お辞儀をしてマイクを妹へ返すUちゃん


U「次の曲は……お兄さんお姉さまはよく知ってる曲だよ」

ってことはアニソンか


U「タイトルは『獅子』だよ。Aちゃんも知ってよね?」

それって……


U「先輩達に、見せつけてあげよ!Aちゃんとお兄さんお姉さまの絆ってやつをね!」

初めてUちゃん達と会ったカラオケの時に、南城さんと堀北さんが歌ってくれた曲を選んだのか……


妹「もう、みんな……気の利かせ方が変だよ……でも、ありがと!」

俺と視線を合わせて、頷く妹

しょうがないな、デュエット曲だし一緒に歌ってやるよ


ちなみに、俺はどっちのパートも歌詞は暗記している

それくらい好きな曲だからな


妹は……スマホを出さないのか?


俺「まさか、歌詞覚えてるの?」

マジで?


妹「うん、片方だけ」

……上等じゃねぇか


俺「どっちの方?」

頼むシンデレラの方歌えてくれ


妹「歌う順番が後の方」

よし!

それなら問題ない


俺「大丈夫。先の方なら」

歌声的に何とかなるはず!


妹「それじゃ、お姉ちゃん行くよ!」

おう!


妹がRちゃん達に合図を送る


Rちゃんがバチ同士を打つ


R「1!2!1!2!3!4!!」

メンバーの心を1つにして、一斉に音を鳴らし合わさる


イントロが終わり、俺が先に歌を歌う

交互に歌っていき、途中で一緒に歌い、また交代で歌う


お互いに掛け合いのように歌い

楽しさやステージの成功を願う気持ちが共有される感覚を得る



無事に歌いきって、観客側にお辞儀をする

俺(やり切ったぁ……!)




すると、俺達全員に対して割れんばかりの拍手が送られた


そのままステージから捌けると、実行委員会や裏方の係の生徒達からも拍手が送られた


控え室まで戻ってきて、それぞれイスや床に腰を下ろした


R「疲れたぁ~~~~~!!」

U「緊張したぁ~~~~~!!」

Y「熱かったわね」

T「楽しかった~」

そうだな


妹「はは……」

俺「お疲れさん」


妹「おにぃもね」

おう


俺「一時はどうなるかと思ったけど、案外なんとかなるもんだな」

前のグループがトラブるとは思ってなかったからなぁ


妹「うん、そうだね」


R「おに、お姉さま!」

うん?


俺「何かな?」


R「ありがとうございました!」


俺「えっと……何が?」

何かした?


R「あの、最後にやった曲です!」

あ~、あれね


俺「いやいや、大した事してないよ」

頑張ったのは、Rちゃん達自身だからね


U「そんなことないですよ!歌詞覚えてないだろうなって思ってたけど、2人とも完璧だったし!」

まぁ、あの曲に関してはな


俺「よく歌う曲トップ3に入るくらい好きな曲だったからね」

妹が覚えてたのは信じられなかったけどな


妹「おにぃが好きな曲なのは知ってたから、今度カラオケで一緒に歌いたいなって思ってたんだよね」

なんだ、そんな事思ってたのか


俺「それなら今度一緒に歌うか?」


妹「うん!」

まぁ、次カラオケ行けるのがいつになるか分からないけどな……


俺「さて、それじゃ俺は着替えようかなぁ」

いつまでもこのカッコじゃ、歩き回るのも苦労しそうだし


妹「そうだよね」


妹達が教室から出てくれようとした、その時


コンコン!と勢いよくドアをノックする音が響く


妹「な、何?」

また、誰か来たのか?


「失礼します!実行委員会の者です!」

またかよ⁉


妹「ど、どうしたんですか?」

めちゃくちゃ焦ってるけど


「実は、皆さんがステージを降りた後アンコールの声が凄まじくて」

マジかよ……


妹「でも、アンコールは無しだって最初に言ってましたよね?」

それなら安心だな


「はい……ですが、体育館に見に来た方々から抗議がありまして」

なんじゃそりゃ……


「急遽、1組だけ最後にもう1度出てもらう事になりました」

おいおい……まさか


妹「それって」


「はい、皆さんに出てもらえないかと聞きにきたんですけど……お願いできませんか?」

んな事言ったってなぁ……


妹「その、時間って何時くらいになりますか?」

え?

引き受けるのかよ⁉


「そうですね……今日の終わりが17時なので、16時50分くらいの予定です」

ぎりぎりの時間か……


妹「分かりました。もちろん、お姉ちゃんも一緒で良いんですよね?」

いや、俺はいいよ⁉

折角のアンコールなんだから、俺抜きで出てくれよ


「もちろんです!ありがとうございます!!」

いや、ちょっと待ってよ⁉




なんで俺まで出る事になってるんだよ!!

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