第452話 全力のステージ

2曲目が終わり、ちょっとだけ休憩がてら水を飲む妹


そんな妹へ、ついに観客から声がかけられた


「もっと盛り上げろー!」

批判、か⁉


「やる気だせー!!」

こいつ……⁉

妹達は十二分にやる気出してやってるだろ⁉


「ちゃんと練習したのかよー!!」

チッ……

今の声の奴ら、絶対に許さないからな


「お兄ちゃんが居なきゃ何もできないのかー!」

うん?

この声……この前校門の⁉


「やれる所を見せろー!!」

アイツら、なのかよ⁉

どんだけうちの妹に恨みがあるんだよ!


妹「やる気はあるもん!!!」

マイクを使って反論する妹


「なら、さっさと次の曲歌えー!」

絶対に、後で〆るからな……


妹「もう!!分かってるよ!!それじゃ…次の曲行くよ、みんな!」

後ろにいるメンバーとアイコンタクトをして、再開する

Rちゃんのドラムが始まりを告げる

Uちゃんのベースがリズムを刻む

YちゃんTちゃんが、メロディーを奏でる


そして、妹の歌声がマイクを通して観客へ届く



さっきのやり取りで、少しムキになって声を張る妹は

今まで以上に熱唱する



そんな妹の姿と歌声が、やっと観客へ伝わった!!


間奏の時に、エールが送られた


頑張れー!盛り上がっていこー!

そんな感じの応援の声が妹達へ送られる


間奏が終わり、2番に入る

声援を受けて、妹達のテンションも上がっていってる



流れとか空気ってのが変わってきたな


この調子で行けば、4曲目は最高の状態で歌えるんじゃないか?



もしかして……さっきのアイツらはコレを見越して?

いや、そんな訳ないよな


うん、もしそうだったとしても……認めないからな







3曲目が終わり、観客の盛り上がりが騒動の前くらいまで回復している

気がする



良い流れだ


そのまま順調に4曲目、5曲目も歌いきる

そして、とうとう俺の出番が近づいてきた



妹「はぁ、はぁ……はい!ここで特別ゲストを、呼ばせてもらいます!!」

やっと出番だな

何ていうか、ここって一番ステージから近いから

待機場所っていうより特等席だったんだな


妹「私の従姉妹のお姉ちゃんです!!」

よし、行くか!


「あ、あの!ちょっと待ってください!」

うん?


俺「なんですか?」

実行委員会の子だよね?


「その、前のグループの持ち時間が余ってて……調整の為に1曲追加してください」

はぁ⁉


俺「そんな事私に言われても……」

妹達に聞いてみないとできるかどうかすらわからないんだけど……⁉


「それじゃ、お願いします!」

ちょ、おまっ


行っちゃったよ……


妹「お姉ちゃん、緊張してる⁉出てきて大丈夫だよー⁉」

あ、そうだ

出番だった……


待機場所からステージに出ると、スポットライトで視界が一瞬真っ白になる


すぐに目は慣れて、客席側を見渡せるようになった


見回すと、かなり後ろの方に南城さん達がいるのが見えた

良く見えないけど、多分うちの両親も近くにいるんだろうな



妹(どうしたの?)

俺(実行委員会から1曲追加しろって)

妹(え⁉そんなのムリだよ!)

だろうな


俺(どうする?)

妹(同じ曲を2回やるしかないかも……)

それは、絶対に時間調整だってバレるよな


俺(でも、他に方法はないよな……)


妹「えっと~……、特別ゲストのお姉ちゃんを加えて、後2曲行きますね!」


R「盛り上がってこー!」

T「いえぇーい!!」

なんか、Rちゃん達テンション高いな……⁉


U「Aちゃん、とりあえずやろ!」

そ、それもそうだな


妹「うん。みんな、準備はいい?」


R「もちろん!行くよー!1、2、1、2、3、4!!」

練習で聞いた時よりも、迫力が上がってる⁉

こんな圧をかけられちゃ……俺も応えないわけにはいかないよな!



折角練習してくれたんだ

その努力に応えるために、全力で俺も歌うよ!!



観客の反応とか、ライトの眩しさとか……色々気になってたけど

そんなの、もう気にならない!


この1曲に全力をかける!!




歌う事に夢中になっていたら……あっという間に1番を歌いきっていた

間奏中に、妹が俺の手を握ってくる

お互いに汗をかいているが、気にせずギュッと掴む


妹(楽しい?)

俺(もちろん!)

楽しいに決まってるだろ!

観客の声援が時折聞こえて、手を振り上げて盛り上がってる観客の姿が見える


ああ、なんだコレ……

めっちゃ気持ちーー!!



2番に入って、俺のテンションも限界まで上がっていく


ああ、どうしよ、めっちゃ楽しい、これ……癖になりそう!!



テンションがマックスまで上がった状態で、歌い切った……


俺「はぁ……はぁ……」

全力で歌うって気持ちいいな


妹も息を切らしているし、Rちゃん達も汗を腕で拭っている





さて……後1曲、どうするんだ?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る