第451話 妹達はステージへ出る

悲鳴は観客席側からだった


見てる人の誰かが興奮し過ぎて倒れたりしたのかな?

だとしたら、一大事だな


妹達のステージに影響がなきゃいいけどな……



なんて思っていたら、担架を持った2人がステージに出て行った

前の方の客席だったのかな?

直ぐに担架に乗せられた生徒が1人運ばれてきて、そのまま裏の通路の方へ運ばれて行った


その生徒は、俺達の前のグループのメンバーの1人だ


ステージを覗くと、メンバーが1人欠けてしまい

棒立ちの残りのメンバーだけが残されていた


メンバー構成を見るに、ボーカルが倒れたみたいだ

演奏だけはできるだろうけど……どうするんだろうな


この状況から、持ち直すのは……無理か


一度、幕が閉じられる

少々お待ちくださいとアナウンスで案内が入り、前のグループの子達が肩を落としてステージから捌けていく


妹「えっと……」

動揺してるな……無理もないけど


俺「気にするな」

と言っても無理だよな


妹「……うん」

気にしちゃってるな


俺「お前は、自分の心配をしろよ」

お前が倒れたら大変なんだからな?


R「なんか、緊張してきたね」

T「そうだね」

U「大丈夫かな?」


あ~……全員が影響受けてるなぁ

これは、まずいぞ

俺が一肌脱ぐしかないか


俺「皆さん、1つよろしいでしょうか?」

笑え、そして力を抜け


俺「やる前から失敗する事を恐れてはいけません。皆さんは、たくさん練習してきたのでしょう?」

何で笑わないんだよ!

もしかして、スベってる⁉


俺「その練習を無駄にしてはいけませんし、何より楽しむ事が1番大事ですよ?」

だから、笑え!


妹「うん……、そうだよね」

笑わないのかよ⁉


R「さすがお姉さま!」

T「お姉さま、ありがとうございます!」

ちょっと待って⁉


Y「ありがとうございます。何か、楽しめそうな気がしてきました」

いや、だから


U「よーしっ!やるよー!」


ま、まぁ……気持ちは戻ったみたいだし、いいか

ウケ狙って、スベって、真面目に受け取られるとか……恥ずかしっ




妹が袖をちょいちょいと引っ張る


俺「ん?」

何か言いたい事でもあるのか?


妹「おにぃ、ありがとね」

と小声でお礼を言ってくる


お、おう……そう思うなら笑ってくれよな




命に別状はないと、アナウンスが入り観客も裏方の生徒も一安心する

そして、幕が開き再開が告げられる


こう言っては、悪いけど……騒動があったせいで、観客側は冷え切ってしまった

これから、もう一度盛り上げなおすのは……キツイだろうな


観客も心配で盛り上がるどころじゃないだろうから、素直に楽しめるわけがない


頑張れ……

俺には、何もできないけど


応援だけはしてるからな









妹達がステージに上がり、自己紹介を始める


妹「えーっと、初めまして!!ボーカル担当のAです!」

元気よく挨拶を始めたけど、観客は静かなままだな……


妹「まずはメンバーを紹介します!ギター担当のTちゃん!」

ギュインギュイーンとギターを掻き鳴らすTちゃん


妹「ベース担当のUちゃん!」

Uちゃんは音を鳴らさずにお辞儀だけした

もしかして、どこか不調なのかな……?


妹「キーボード担当のYちゃん!」

Yちゃんは何故か猫踏んじゃったのメロディーを少しだけ演奏した


妹「ドラム担当のRちゃん!」

ドタドタドタドタドタ、バーーン!!

打ち鳴らしてから、謎のポーズを決めた


妹「私たち5人が、ガールズバンド『ブラコン』です!」

全員で揃って頭を下げて挨拶をする


妹「それじゃ早速ですが、1曲目行きます!」

メンバーと顔を見合わせて、頷き合う


Rちゃんがスティックを鳴らし、合図を出す

そして、始まった


1曲目のイントロから、全力の演奏を披露していく


見守る俺も、熱が入る


頑張って演奏し、歌う妹達


しかし、観客は盛り上がり切れていない


でも、きっと2曲目や3曲目には観客も盛り上がってくれるはず!

だから、それまでの辛抱だ!

頑張れ!



スポットライトに照らされた妹達を見守る俺は、とある違和感に気が付いた


俺「前に聞かせてもらった時の……勢い?が足りないな」

やっぱり、さっきの事で委縮してるのか?

少しづつ観客も盛り上がってきてるけど、このペースじゃ……妹達のステージが台無しになっちゃいそうだな


どうすればいい……?


たくさん練習して、本番直前まで完璧だったのに……

こんな不完全燃焼な状況じゃ……


南城さん達に頼るか……?

俺に出来る事は、それくらいしかない


でも、それじゃ妹達の実力じゃないと……そう思われる可能性が高い

折角の練習の成果を、奪うような事はしたくない


迷ってるうちに、1曲目が終わり一息つく妹達


そして、2曲目の演奏が始まった


俺は、スマホを手に考えた

どうすれば、妹達のステージが成功するか……

何か、小さくてもいいからキッカケが欲しい


妹達の頑張りを手助けできるキッカケ……何かないのか?


妹の友達とか、来てるなら応援してやってくれ!

妹達アイツらを助けてやってくれ!



そう願う事しかできないまま、2曲目も終わってしまった


体育館の中は、まだ盛り下がったままだ


誰でもいい!!

誰か、妹達に声援をかけてくれ!


きっと、誰かの一声で……それで変わるから!

誰か……!!!

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