第450話 バンド名は

文化祭実行委員会っぽい男子が、俺達の前に出るグループに声をかけた


「次の出番の方達は準備お願いします」

声をかけられたグループのリーダーっぽいヤツは、緊張していて裏返った声で返事をしている


俺「大丈夫かな?」

妹「ちょっとマズそうだよね……」

だよなぁ


俺「そういえば、母さん達から連絡は?」

もう、とっくに来ててもいいはずだけど


妹「あ、さっき着替えてる時に連絡来たよ!だから、体育館に行ってって連絡しといたよ」

なるほどね


俺「なら、もう体育館に来てるかな?」

そんなに時間かからないよね


妹「うん!」

そんな他愛もない会話をしてると、妹のスマホに誰かから連絡が来た


ポケットからスマホを取り出した妹は

妹「ちゃんと来てるみたいよ」


と画面を俺に見せてくる


そこには両親と南城さん達が一緒に写っている画像が送られてきていた


俺「仲……良さそうだね」

親父にそのピースの出し方は歳考えろって言いたい!

でも、今はそれどころじゃない!!


今は自分たちのステージに集中しなきゃいけない!


妹「あ、次のグループ出るみたいよ」

って事は、その次は俺達のグループか


「次の出番の方々は……えー、バンド名『ブラコン』さんです。スタンバイお願いしまーす」

あれ?

何だ、まだだったか……

次のグループはどんな人達だろうなぁ


妹「ほら、お姉ちゃん行くよ」

うん?


俺「違うと思うけど……もしかして……さっきのバンド名って」

まさかね?


妹「うん。私たちのバンドだよ」

……はぁ⁉


俺「ちょっと待て、何でそんな名前に」


R「お姉さま、これはメンバー全員の総意ですよ」

総意⁉


Y「その通りです」

いや、おかしいだろ⁉


T「賛成票は4票でしたけどね」

圧倒的賛成率⁉


U「もちろん、反対したのはAちゃんだけです。でも、Aちゃんに拒否権はないので実質全会一致です」

うちの妹、もしかしてイジメられてる⁉


俺「え?どういう事?」

どうして拒否権が無いんだよ⁉


妹「みんなで、バンド名の案を出し合ってくじ引きにしたんだけど……」

う、うん


R「そこで引かれたのが『ブラコン』だったんです」

お、おう

だんだん、落ちが見えてきたな……


Y「その案を出したのが、Aちゃんだったんですよ」

なんで、よりにもよってその言葉をチョイスしたんだよ……!


妹「だ、だって全然思いつかなかったんだもん!」

思いつかないって言っても、他にも何かあるだろ⁉


俺「少しは想像力を働かせなさい!!」

いくら何でも、ブラコンって……


T「まぁまぁ、お姉さま落ち着いてください。ちゃんとバンド名を『ブラコン』にしたのには理由があるんですよ」

理由?


U「バンド活動してるAちゃんって、実はすっごくモテるんです!」

モテる?

こいつが?


妹「ちょっ、やめてよ!」


Y「だから、バンド名で変な虫が寄り付かないようにしようって事になったんです」

バンド名の理由が、虫除けって……


U「結果的にこの名前を公表してから、告白してくる男子は一気に減りましたから」

効果あったのかよ……⁉


T「いやぁ、Rちゃんの案にならなくて良かったよね」

うん?


俺「Rちゃんの案って」

ブラコンより酷いの?


Y「私はアレを口にしないで済んで良かったと思ってます」

口にするのすら憚られるくらいなの⁉


U「そうだよね。だって『玉潰し隊』だよ?アレは無いよ」

た、玉潰したい……?


R「なんでお姉さまの前で言っちゃうの⁉」

いや、うん……


俺「Rちゃん、ネタでもあんまりそういう言葉は使わない方がいいと思うわ」

品性を疑わちゃうからね?


R「使いませんよ⁉あんまりにも、男子がウザかったから!」

だからって……


俺「そ、そう。それで、他の皆の案は何だったの?」

これ以上Rちゃんを苦しめるわけにはいかないから、話題を逸らしてあげるかな


T「私は、百合の楽園にしました!」

うん、どうどうと宣言してるけど

意味合いとして、百合ってGLだよね?

もしかしてTちゃんは女の子が好きなのかな?


俺「Tちゃんと2人きりになっちゃダメよ?」

妹にしっかりと言い聞かせてやらないと……


T「ち、違いますよ⁉私は至ってノーマルですからね⁉」

いや、うん、そう言うよね


俺「大丈夫、きっと素敵な彼女に出逢えるから。頑張ってね」

ただし、うちの妹はやらん!


T「違うのに……」

否定する事はないよ

自分の気持ちに自信を持っていいんだよ


U「私は普通ですよ?『Uユー TRYトライ Aエース』です!」

ほう、良いじゃん


俺「なんで、採用されなかったの?」

かなり良いと思うけど


妹「普通過ぎて、男子除けにならないから……だって」

あ~……命名理由的にそうなるよな


Y「そんな感じで、バンド名はブラコンになりました」

うん?

ちょっと待って


俺「Yちゃんの案は?」

まだ聞いてないよね?


Y「そんな、私の案なんて……面白みがないので没になりましたから」

なんか、Yちゃんが若干焦ってる?


妹「Yちゃんの案はね、『Aちゃんを守る会』だよ」

面白みは……

確かに無いけど、まぁ男子除けって目的は果たせそうだよな?


俺「選ばれなかった理由は?」

何かあるの?


妹「私が反対したから……」

あ~……そっか

自分を守る会ってバンド名は、イヤだよなぁ


でも、ブラコンよりはマシだったんじゃないかって気がしてくるぞ?



バンド名の裏話を聞いていたら、突然……








キャァーーーーーーーーー!!


と、歓声とは違う悲鳴が上がった⁉


な、何が起きたんだ⁉

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