第448話 本番まで後少し

堀北さんが化粧を直してくれた後


南城「あ、そうだ!」

と声を上げる南城さん


仁科「どうしたの?」

うん


南城「写真撮ろ!4人で!」

え?


俺「俺はいいよ」

こんな格好だし


南城「ダーメ!きっといい思い出になるからね!」

いい思い出って……

なら、心に残すだけでいいよ


堀北「私も嫌よ」

だよなぁ


南城「ダメったらダメ!絶対に撮るの!」

えぇ……


仁科「なんでそんなに撮りたいの?」

そうだよ

いつもはそんな事言わないじゃん


南城「いいから!1回だけ!ね?」

まぁ、そこまで言うなら……


俺「絶対に他の人に見せないでよ?」

女装してる姿なんて、できれば残したくないんだから


南城「もちろんだよ!ね、春香……」

お願いってポーズをする南城さん


堀北「……はぁ、分かったわ。ただし、1回だけよ?」

あ、堀北さんが折れた


南城「やった!」

さて、写真撮るのはいいけど


俺「それで、どうやって撮るの?」

まさか、スマホで自撮り?


南城「う~ん……できれば、ちゃんとカメラで撮りたいんだけどね。今はカメラも撮ってくれる人もいないし」

だよなぁ


「では、私が撮りましょうか?」

突然教室の角から姿を現した人物は……


俺「えっと…W・Aさん?」

だっけか?


W「ええ、ですが気軽にWさんと呼んでくれてもいいんですよ?」

そ、そうですか?


堀北「あ、貴方はいつからそこに?」

そういえば、全然気配しなかったな……


W「最初から」

さ、最初から……?


俺「それは」

どの最初から?


W「家を出た所からずっと」

い、家からずっと⁉


俺「……全然、気づかなかった」

どんだけ気配消すの上手いの⁉


ま、まぁ今の所見られて困る事はしてないから……大丈夫だよな?


W「気づかれず監視するのも、仕事の内なので」

マジかよ……


堀北「もしかしなくても、今までのやり取りも」

W「一部始終見てましたよ」

ですよねー⁉


堀北「そ、そう……」

力なく項垂れる堀北さん


W「お写真はどうしますか?」

あ、そうだった

突然現れた事に驚きすぎて、頭から抜けてた


南城「あ、じゃあお願いします!」

スマホを渡そうとするが、Wさんは受け取らず

スーツの内ポケットからスッと薄型のデジカメを取り出した


W「このカメラで撮ってから、皆さんへデータをお渡ししますので」

準備良いなぁ……


南城「分かりました!」

何か、カメラのメーカーロゴが見たことないヤツなんだけど……


俺「あの、そのカメラって」

もしかして……


W「鋭いですね。そうです、コレは四季島グループの技術の粋を集め作られた超高性能コンデジです。他メーカーの一眼レフカメラに引けを取らない性能と聞いてます」

そこまでは気付かなかったよ!!

ロゴ的に四季島の所の製品っぽいと思ったけど!!


俺「そ、そうですか」

きっと凄いんだろうけど……そんな事よりWさんの熱弁が怖かった


仁科「それじゃ、さっそく撮ってもらう?」

うん、そうだね


堀北「ちょっと待って、メイク直すから!」

慌てて化粧道具を取り出して鏡を見ながら、チョイチョイと化粧を直す

うん⁉

今手に持ってる口紅用の筆、俺に使った奴じゃ……


南城「春香~、まだ~?」

早く撮りたい南城さんが、堀北さんを急かす


堀北「千秋!大人しく待ってよ!」

南城さんが、子供みたいな怒られ方してる

ちょっと親子っぽくて面白いかも……


少しして、化粧直しを完了して

鏡に顔の角度を変えながら確認する堀北さん


堀北「大丈夫……よね?」

少し自信なさげに、化粧を終わらせる堀北さん


パッと見は、あんまり変わってないんだけど……多分違うんだろうな


W「では、撮りますので並んでください」

教室という事もあって、黒板を背景に写真を撮ってもらう


W「はい、では……1+1=」


俺「に~」

南城「にっ!」

仁科「2!」

堀北「……」


俺は控えめにピースサインを出す

南城さんは、腕を前に出してピースサインを出す

仁科さんは、顔の近くに手を持ってきてピースサインを出した


しかし、堀北さんは手を後ろで組んでピースサインをしなかった

堀北さんって、写真撮られるの苦手なのかな?


W「はい、撮れましたので直ぐにお送りしますね」

そのままカメラを操作し、少しすると

スマホへ画像が送られてきた


俺「もう、来た……」

あのカメラ……なんなんだよ⁉


W「写真は現像でき次第、皆さんへお渡ししますので」

いらねぇ……


そんなやりとりをしてる内に、妹達が着替えを済ませて教室へ戻ってきた


妹「ただいま~」

戻ってきた妹達は、俺の着てるヤツと似た感じの衣装を身に纏って現れた


俺「おお!皆似合ってるよ」

見違えたよ


妹「当たり前だよ!」

R「えへへ」

T「嬉しいね」

U「ね」

Y「良かった」


さて、そろそろ本番の時間かな


俺「気合入れていこー!」


おーー!

と全員で声を合わせるバンドメンバー


これから、やっと本番だ……

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