第436話 練習終わり

曲の止まったタイミングを見計らう


俺「おーい、そろそろお開きにしようなー」

根の詰め過ぎはよくないぞ


妹「はぁ…はぁ…もう1曲だけ!」

ダーメ


俺「却下する!」

お前、もうヘロヘロじゃん

それに、皆の事も考えてやれよ


妹「なんで⁉」

聞き分けがないな


俺「Rちゃん達がケガするからだ。少し、落ち着け」

腱鞘炎になったら、当日演奏どころじゃないんだぞ?


妹「え⁉」

振り返った妹が目にしたのは、腕や指をマッサージするメンバーの姿


俺「それに、お前だって喉をやったら歌う事できないんだ。こういう事は加減が大事なんだよ」

分かったか?


妹「うん……」


R「わ、私たちは大丈夫だから!」

そんな訳ないだろ!

いう事を聞かないRちゃんの腕を軽く掴んで持ち上げる


R「ひゃぁっ⁉っつーーーーー!!!!」

痛そうに身をよじるRちゃん


俺「ちょっと掴んだ程度でその有様で、どこが大丈夫なんだ?」

もう今日はダメだし、なんなら明日も練習は控えた方がいい


妹「みんな、ごめんね!全然気づかなかった」

お前が暴走して、お前だけケガするならまだいいが

今回は他にも迷惑をかける人がいるからな


俺「それと!聞いてる感じだと、もう練習いらないんじゃないかってくらい上手いからな。今日はこの辺にしておけ」

いいな?


妹「うん。みんな、それじゃ今日はここまでね!」

そうそう


R「うん、おっけー」

Y「分かりました」

T「はーい」

U「へーい」

ふ~ん、ちゃんとリーダーやってじゃん

妹のくせに


俺「南城さん達も、遅くまで付き合わせちゃってごめんね」

同じ曲の繰り返しって、退屈じゃなかったかな


南城「ううん!すっごく楽しかったよ!」

仁科「そうそう!当日が楽しみ!」

堀北「これだけ上手なんだもの、きっと会場を沸かせられるわ」

そうだね!


俺「さて、それじゃ帰り支度するか」

と言っても、鞄を持つだけなんだけどな

それにしてもココって機材とか、凄いよなぁ


Rちゃん達もそれぞれ荷物を持つ


Y「お兄さん、当日もよろしくお願いしますね」

う~ん


俺「できるだけ足引っ張らないように気を付けるよ」

練習時間的には俺が一番短そうだしな


R「お兄さんなら大丈夫ですよ!」

どっからその信用は沸いてきた?

まさか、妹からか?


U「そうそう!」

うんん?


T「むしろ、ねぇ?」

とTちゃんが妹へ話を振る


妹「え⁉私⁉私は大丈夫だよ!みんなと一緒にいっぱい練習したじゃん!」

って事は、俺への信用は妹からじゃなさそうだな……


R「だって、普段はしっかりしてるのに……たまに天然だから」

え?

お前、学校で何やらかしたの?


妹「そ、その話は無し!今は関係ないじゃん!」

あ~……何かしらんだな?


Y「それじゃ、皆さんお疲れ様でした」

全員が荷物を持って階段を上がり、玄関でYちゃんに見送られる


俺「お世話になりました」

練習場所の提供とか、普通出来ないよ


Y「いえいえ。でも、もう当日まで地下は使えないので……あの場所での練習は今日で最後なんです」

そうか

それで全員必死にやってたのか


俺「そっか。それじゃ、当日よろしくね」

Y「こちらこそ」



Yちゃんの家の敷地から道路へ出る


あたりはもう暗くなっていて、街灯が点いていた


俺「よし、駅まで行こう」

車道側に広がらないように2人づつ並んで歩く

後ろからUちゃんRちゃん、Tちゃん妹、俺と南城さん、堀北さん仁科さん


帰りの道中の話題はもちろん

『妹が学校でやらかした事』だ



R「それでは、天然事件の開廷です!」

いつの間にか裁判になってるな


T「被告人は真実を話してください」

妹(被告人)か


妹「だから!天然とか、そういうんじゃないってば!」

U「それを判断するのは、裁判長だよ」

裁判長って誰が……って俺?


俺「まぁ、いいか」

話が聞けるならそれで

妹の学校での様子とか、普段なら知りえない事だし


妹「おにぃ⁉」


R「じゃあまずは、Uちゃんから」


U「はーい。私が目撃したのは、入学早々に男子へ言い放った一言です」


妹「え?何かあったっけ?」


U「あの日は雨が降っていました。クラス内でグループが出来て纏まる人数が決まった頃の事です。その日、クラスにいた名前持ちのT中君が被告人に話しかけました」


妹「え?あの事?あれは天然とかじゃなよ⁉」

へぇ、身に覚えがあるのか


U「T中君が、被告人へ『やぁ、君可愛いね』と声をかけました。すると被告人は」

妹「は?ってなって」

まさか……


U「そのまま『は?』と返事をしました。あからさまに不機嫌そうな返答に、クラス内が騒然としました」


妹「え?そうだったの?なんかやけに静かだなって思ったけど」

天然って言われるの、そういうトコじゃねーの?


U「めげずにT中君は自分の事をこれでもかって位アピールしました。しかし、全てを聞いて言い放ったのは……『それがどうしたの?』でした」

うわぁ……

我が妹ながら、酷いな


妹「だって、他になんて言えばいいのか分かんなかったんだもん」

そこは「へぇ、凄いね」とか言っとけばいいんだよ


U「T中君からの猛アタックを理解できず、スルーする天然ぶり!どうですか、裁判長!」

あ~……


俺「ま、まぁ……仕方ないんじゃないか?」

この事に関して、俺はノーコメントを貫きたい


南城さんや堀北さんが、なんかニヤニヤしてるからね!


その後もTちゃんやRちゃんから色々聞かせてもらったけど、妹はどの話も天然ではないと思ってるみたいだ


聞いた話の半分くらいは、天然っぽかったけど……まぁ、天然が悪いってわけじゃないし


気にしなくていいと思うぞ

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