第424話 帰宅と説明

家の前まで来て、車は停まる


運転手「到着しました」


俺「ありがとうございます」

妹「ありがとうございます」


お礼を言ってから、車を降りる


玄関のドアを開けようと手を伸ばすと、急にドアが開き俺の手を強打する!


俺「イッタ!!」

内側からドアを開いたのは、当たり前だが……母さんだった


母「やっと帰ってきたのね!」

うん?


俺「うん、ただいま」

そういえば、妹は母さんになんて説明したんだ?


妹「お母さん、ただいま~」

母「はい、おかえりなさい」


俺「とりあえず、今日の夕飯何?」

それだけ聞いておこう

そしたら部屋に行って休憩しよう


母「今日は、サーモンのムニエルよ」

そっか


俺「了解。それじゃ、俺部屋に行ってるから」

夕飯出来たら呼んでね


母「はいはい」


妹「あ、そうだ!おにぃ!」

ん?


俺「どうした?」

なんか用か?


妹「部屋行っていい?」

別にいいけど


俺「何しに来るんだ?」

なんか用事とかあったか?


妹「それは後で話すよ」

そうか


俺「まぁ、好きにしろよ」

そうだな

俺も聞きたい事あるしな


妹「そうする」


母「それじゃ、夕飯までちょっと待っててね」

それだけ言って外へ向かう母さん


俺「どこ行くの?」

いつもなら、もう夕飯の準備初めてる時間じゃない?


母「買い物よ。ちょっと買い忘れがあったから」

そっか


俺「ふ~ん、そっか。気を付けてね」

いってらっしゃーい


さて、部屋で夕飯の時間まで過ごすかな





階段を上がり、自分の部屋へ入る


家の空気は、やっぱり落ち着くなぁ……




窓を開けて換気をしつつ、外を眺める

夕陽が景色を紅く染めて、綺麗だな


黄昏時って今で合ってるかな?


割と、好きだな……この時間帯って


コンコンとノックの音が聞こえる

俺「どーぞー」


妹「おにぃ」

洋服から部屋着に着替えた妹が部屋に入ってきた


俺「それで、用事ってなんだ?」

窓を背に妹へ問いかける


妹「うん……おにぃ、文化祭なんだけど」

ああ、その話か


俺「どうした?」

何かあったのか?


妹「やっぱ、おにぃは出ない方がいいのかなって」

それは、出るなって事か?


俺「降板か」

まぁ、元から無理があるとは思ってたけどな

ほんの少しだけ、本当に少しだけ残念だな


妹「えっと、今回の事でね……。私も気をつけなきゃって思ったの」

そうだな

俺と同じで、名前持ち化する危険を持ってるしな


俺「そりゃ、お前だって名前持ち化はしたくないよな」

もう俺の場合は、手遅れっぽいけど

妹はまだ発症してないから、どうせなら一生発症しない方がいいな


妹「え?」

俺「うん?」


妹「私が気をつけなきゃって思ったのは、おにぃの事だよ?」

俺?


俺「どういう事だ?」

何で妹が俺の事で気を付けるんだ?


妹「だって、今回は……私のせいだったから」

いや、それはないだろ


俺「なんでお前が責任感じてるんだよ」

意味がわからん


妹「だって、私が出かけようなんて言わなければ……あんな事にもならなかったんだよ?」

あ~~……なるほど

それで気にしてるのか


俺「あのな、今回の事はお前のせいって事は100%ありえないからな?」

妹「でも!」

でも、じゃない


俺「いいか?今回の事は、俺の軽率な行動のせいなんだ。あの時、四季島にちゃんと連絡していれば」

誰もケガしなかったんだよ


妹「そしたら、私たちの誰か……ううん、全員が酷い事をされたかもしれないんだよ!おにぃが来てくれたから、私たちは全員無事だったんだよ!」

それもきっと、四季島くらいの名前持ちなら都合良く間に合う事もできるだろうからな


俺「ありがとうな。お前だけでも、そう思ってくれるなら……少しは無鉄砲な行動も無駄じゃなかったって思えるよ」

うん

全部が無駄じゃなかった……


妹「私だけじゃないよ。おにぃが入院した後ね、皆で話し合ったんだよ」

話し合った?


俺「どんな話をしたんだ?」


妹「千秋先輩は最初は怒ってたけど、春香先輩が落ち着かせてくれてね。千秋先輩ってね、あの時なんで自分が怒ってるか分かってなかったんだよ?おかしいよね」

え?

俺があの男を消したと言ったから……

南城さん達にはそういう事をするなって言っておきながら、俺がやったから怒ってたんだと思ってた


妹「あの時ね、千秋先輩は……自分自身に怒ってたんだよ」

南城さんが自分自身に?


妹「千秋先輩はね、おにぃに助けてもらって嬉しかったんだって……」

嬉しかった?

怒ってる理由じゃないの?


妹「『赤の他人が、消えようと関係ない。おにぃが自分を助けてくれてるって事実が何より嬉しい』ってそんな醜い感情を持った自分が許せなかったんだって」

そっか……


俺「そんな風に思ってたんだ」

知らなかった


妹「私も、千秋先輩の気持ちは分かるから……おにぃ、千秋先輩の事許してあげてね」

許すも何も、怒ってないよ


俺「うん。明日、ちゃんと怒ってないって話すよ」


妹「うん」




さて、妹の話は終わりっぽいし

今度は俺の方から聞く番だな


俺「俺もお前に聞きたい事があるんだよ」

妹「何?」


俺「母さんに何て言ったんだ?」

話の辻褄を合わせておかないと困る事になるからな


妹「あ、うん。おにぃは、外泊した事にしてあるよ」

外泊って、そりゃそうだろ


俺「どこに?」

妹「四季島先輩の家」

……は?


俺「四季島の家?」

なんで?


妹「だって、千秋先輩たちの家に泊まるなんて言えないし」

……そうだな


俺「そうか。それじゃ、後で四季島にも話合わせてもらっておかないとな」

とりあえず、誤魔化せたみたいだし


俺「ありがとな」


妹「うん!」


よーし、四季島に連絡入れて

その後は……何かアニメでも見るかなぁ

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